この記事をまとめると
■運転免許の自主返納は十分に進まず地域差も大きい
■返納後の移動手段や生活習慣の変化が負担となっている
■自動車メーカーには交通弱者の視点が求められる
免許返納後の移動手段が課題
運転免許証の自主的な返納制度は1998年に始まった。ただ、国内では身分証明の役目を運転免許証が担う場面があることから、4年後の2002年から返納後に運転履歴証明書を発行するようになった。これにより、身体の衰えを自覚する高齢者などによる返納が定着した。だが、2019年を頂点(約60万件:返納率14.41%)に、以後は返却が下降線をたどっている。2024年には約42万件で、2019年に比べると70%に留まる。
2024年の数値を基に、全国47都道府県における返納者数や各自治体の運転免許者数における返納率を調査した資料がある。それによると、返納率が3.24%でもっとも高いのは神奈川県だ。次いで僅差の東京都となる。さらに、埼玉、大阪、兵庫と続き、上位10都府県は大都市をもつ自治体という傾向にある。公共交通機関の便が比較的よい地域だ。

返納率がもっとも少ないのは徳島の1.74%で、そこから高知、秋田、和歌山……と、下位10県はクルマなしでは日々の生活に困る自治体といえる。では、はるかに公共交通機関の利便性が高い大都市のある地域でも、なぜ、最低返却率の2倍に満たないのだろう?
運転免許証の返納については、運転履歴証明書の発行によって特典が設けられている。たとえば、公共交通機関やタクシー利用の割引や利用券の発行や、各種商店での買い物の配送、レストランでの食事の割引、預金金利が高くなるなど特別な金利の適用などがある。

ただし、地域による格差がある可能性はある。また、返納後5年が経過したり免許取り消し処分を受けていたりすると運転履歴証明書は発行されない。最大でも上記の支援は返納後5年限りとなる。その後はどうすればいいのだろう? 5年後にはさらに老化し、暮らしに必要な移動を自分で確保しなければならない。そのようなことが高齢者にできるだろうか。
年寄りは頑固だと昔からいわれてきた。しかしそれは意図的に頑固であるのではなく、いつもどおり変わらない暮らしを続けたいため、変化や新しいことを嫌うからである。新たなことに融通が利かなくなるのが老化だ。たとえ地域の移動支援があっても、いつもやっていたことがいつもの時間にできず、移動時間の変更をしなければならなくなれば、暮らしの段取りが変わる。高齢者には大きな労力が伴うのである。

しかし、運転免許証を返納しても、そこに自動運転のクルマや配車サービスがあったらどうだろう。自動運転なら運転免許証は必要ない。さらに配車サービスなら、クルマを所有する経費や納税が不要だ。本質を語るとすれば、自動運転こそ免許返納の特効薬だ。
しかし、新車販売の半数を占める大手自動車メーカーも、また市場の30%を占める軽自動車メーカーも、米国や中国ほど自動運転への即時導入に積極的な姿勢は見えない。かたや2027年に軽EVを日本に導入しようとするEMT社は、自宅から目的地までレベル2ながらボタン操作ひとつで支援しながら移動する機能を技術的に目指すとしている。その積み重ねが自動運転へつながっていくのではないだろうか。

運転の楽しさを語るのもいい、エンジンを愛することもかまわない。だが、多くの消費者を抱える自動車メーカーは、広い視野で交通社会を観察し、交通弱者へ目を配る企業経営が必要なのではないか。そしてEVは、自動運転の実現の前提になる。
