Munenori Taniguchi
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ノルウェー・オスロのアマチュア無線グループが、人工衛星を音声で操作する実験に成功しました。欧州宇宙機関(ESA)のキューブサットOPS-SAT PRETTYが受信し、コマンドとして実行した音声は「Play Doom Doom Doom」でした。
実験は、エストニアの人工衛星向けAI開発スタートアップTanagra Spaceと、ノルウェーのアマチュア無線連盟であるNRRLとの協力によって、2026年7月27日に2回行われ、いずれも成功したとのことです。
実験はOPS-SAT PRETTYがオスロ上空を通過する午前と午後のタイミングで行われ、1回目の実験では合成音声をループ再生して送信し、2回目はアマチュア無線家によるマイクからの音声が用いられました。
この2回目の実験では、アマチュア無線家は無線機のマイクに「LIMA ALFA FOUR OSCAR、PRETTY PLAY DOOM DOOM DOOM、PRETTY PLAY DOOM DOOM DOOM 」と話しかけました。「LIMA ALFA FOUR OSCAR」は無線のコールサインで、それに続く「PRETTY PLAY DOOM DOOM DOOM」が衛星向けの音声コマンドです。

この音声を受信したOPS-SAT PRETTYは、受信した音声からノイズを除去して音声をデータ化、Tanagra Spaceが開発した音声認識AIモデルがそのデータをテキストに変換し、コマンドとして実行しました。
そして、人工衛星に搭載されたコンピューターは、『Doom』を起動、実行できている証拠として、プレイ画面のスクリーンショットをポストカード化して地上に返信しました。

この実験で興味深いのは、衛星側で音声認識AIを動作させたというところです。地上であれば、インターネットを通じてクラウドの強力な計算能力を利用することができますが、軌道上では使える電力やメモリー、演算能力に厳しい制約があります。
ここで用いられたのは、SDR(Software Defined Radio)という技術で、オープンソースのGNU Radioと呼ばれるデジタルおよびアナログ信号処理ツールキットを用いて、音声からノイズを除去してデジタルデータ化しました。そして、音声認識にはSherpa-ONNXと呼ばれる音声認識用の軽量なオープンソースフレームワーク・ライブラリーを使用し、コンピューターが実行可能なコマンドに変換、地上のクラウドに頼らずに音声コマンドを実行することができました。

ESAのOPS-SAT宇宙研究所所長デビッド・エバンス氏は、この実験は単に面白い試みとも言えるものの、通常なら厳密に定義されたバイナリーデータでやり取りする地上と宇宙間の通信を、人間の声を軌道上で認識し、コマンドに変換できたことがが重要だとコメントしています。
この技術がさらに発展すれば、人工衛星にコマンドを実行させる以外にも、海上での緊急事態に遭遇した人からの無線による「メーデー」や「SOS」の音声をテキストで記録したり、さらにAIで緊急度を判別して適切な救助機関に情報を伝達するといった応用も可能になると考えられます。
また、Tanagra Spaceの創業者ジョルジュ・ラブレシュ氏は、今回の実験ではテスト用の信号として音声を用いたものの、宇宙空間でさまざまな種類の無線信号を受信し、その内容に基づいて動作する人工衛星や宇宙探査機の可能性を実証できたと説明しています。同じシステムを用いていても、AIモデルを人の声以外の信号で訓練すれば、例えば宇宙の彼方から届くガンマ線バーストや、ブラックホール同士が衝突して発生する重力波のような特定のパターンを持つ信号を、より迅速に検出できるようになるかもしれません。
今回の実験はただ「音声コマンドを使って軌道上でDoomを動かした」というだけではなく、人工衛星が地上から送信された音声を自律的に認識し、その内容に基づいて動作できることを示したものであり、将来的に地上と宇宙にある機器とのコミュニケーションの方法を大きく変える可能性も予感させる、興味深い実験と言えそうです。
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