ここ数年、「フレンドスロップ(Friendslop)」と呼ばれるタイプのゲームが注目を集めている。「フレンドスロップ」とは、友人間でにぎやかに遊ぶことを目的として設計されたマルチプレイゲームのことで、シンプルなデザインや、カジュアルなルールが大きな特徴だ(※フレンドスロップは特定のゲーム群を指すスラング的な用語として使われはじめ、ゲームジャンルを表す言葉として徐々に意味合いが変容しつつあるが、定義自体はまだ明確なものではなく、表現として適切かの議論もある。今記事では、あくまでジャンル的に取り扱う)。
高クオリティなAAAタイトルのゲームと比較すれば、ジャンクな味わいを際立たせた設計になっており、特に10~20代のライトなユーザーに熱狂的に親しまれている。具体的には「R.E.P.O.」「PEAK」「Lethal Company」などのタイトルは息の長いタイトルとして成功しており、最近では「めっちゃカメレオン」のヒットが記憶に新しい。また、VRゲームでもフレンドスロップ系のゲームは非常に遊ばれており、ゴリラとなって追いかけっこする「Gorilla Tag」や恐竜を育成して冒険する「UG」などのタイトルは、現在のVRゲームの盛り上がりを説明するうえで欠かせないものとなっている。
こうしたタイプのゲームは、VTuberやストリーマーにも現在非常に遊ばれている。注目すべきは、フレンドスロップ系のゲームの多くが多人数コラボの定番タイトルとして浸透しつつある点だ。なぜ、そのような状況になっているのか、具体的なタイトルと、それを遊ぶVTuberたちの振る舞いを紹介しながら、解説していく。
お互いの“やらかし”が親睦を深めるきっかけに
仲間と協力して地下を掘り進んでいくというシンプルなゲーム『Pratfall』は、今年の上半期から徐々にVTuber/ストリーマーにプレイされているタイトルだ。
お互いに協力してピッケルや爆弾などの道具をつかって下るための道をつくっていくのだが、自分の足場を崩してしまったり、大型の空洞に落ちたりすると、落下ダメージが入る仕様となっている。
そのため、なるべく仲間の進む道を壊さない、落ちそうな仲間はうまくキャッチする等の協力が必要となっている……のだが、一方で、このゲームは自由な悪ふざけができる点が魅力となっている。
よく分からない怪しいアイテムをフレンドに与えて反応をうかがってみたり、倒れている仲間をあえて放置して先にどんどん進んだり、絶対に今壊してほしくない道を壊してみたりと、道中の“悪ふざけ”が、ゲームデザイン的にかなり許容されているのだ。また、意図していなくても結果的にフレンドを窮地に陥れてしまうこともあり、やらかしてしまったときの気まずさ、間の悪さ自体も、このゲームの大きな魅力となっている。
実際に配信を見てみよう。例えば、VTuberグループ「ビバップ高校」の甘葛すもあさんの配信では、ゲーム実況・赤髪のともさん、VTuber「ゆにれいど!」のコンプサウルスさん、実況者集団「○○の主役は我々だ!」の鬱先生と、これまで甘葛さんと表舞台で深い交流を見せなかったメンバーが集合。冒頭、甘葛すもあさんはベテランの配信者たちに囲まれ、かなり緊張した面持ちを見せていた。しかし、このゲームのあえて“やらかし”を誘発する仕掛けによって、意図せずメンバーを深くに落としてしまうハプニングが頻繁に置きてしまう。それらの失敗に突っ込みを入れたり、弄ったりしている間に、次第に会話が弾むようになり、どんどんテンションがあがっていく甘葛さん。中盤には、アコースティックギターを持ち出して、鬱先生の失敗を弄るオリジナルソングを即興で弾き語るなどのシーンを生み出していた。
こういったゲームのコラボ実況では、誰かの失敗や悪ふざけを許容していきつつも、うまくネタとして昇華していくスキルが、VTuberやストリーマー側に求められる。臨機応変な対応は決して簡単なものではなく、ともすれば仲が悪そうにみえるといったリスクも起こりうる。しかし「Pratfall」はそういった深刻な雰囲気をつくらない陽気さ、馬鹿馬鹿しさがあるため、お互いを弄りやすい土壌が出来上がっているのだ。そのため、険悪にならないネタ的な喧嘩シーンなどを多く視聴者に魅せられるという利点がある。この点が、VTuberの配信でも多く採用されている要因だろう。
ゲームのクリアよりも“遊び”を重視する
『Big Walk』は2~12人でのプレイが可能なオンライン謎解きゲームだ。基本的には広大なオープンワールドを自由に歩き回り、話し合いをしながらパズルを解いていくという内容となっている。ゲームの途中には音声でのやりとりではなく、ジェスチャーやパネルを使ったコミュニケーションが必要になる場面もあり、言葉を使わずお互いのやりたいことをどのように伝えるかがクリアするためのポイントだ。
ただし、このゲームは設計上、そこまで“クリアすること”を重視する設計にはなっていない。広大なフィールドには様々なパズルが用意されてはいるが、それらをクリアしていけば、ポイントをもらって高スコアを獲得といった要素はなく、クリア後の変化もそこまで派手なものではない。解かずにスルーしても良いし、パズルを使って友だち同士でふざけあっても良いくらいの雰囲気になっている(Steamのゲーム説明にも「いったん冒険から離れて、ただ当てもなく延々とブラブラするのもOK」と記載があり、この雰囲気が意図的であることが分かる)。そのため、VTuberたちのコラボでも長時間ゆるく話しながら進める配信スタイルが多い。
にじさんじEN所属の狂蘭メロコさんとゲーム実況ぺいんとさんの配信では、約3時間ほど一緒にプレイ。『NEWTOWN GTA(VCR GTA)』という別のゲーム企画で知り合った2人だが、2名だけのコラボをするのはこれが初めて。最初はゲームのシュールなパズルの数々に戸惑いながら進むものの、徐々にゲームのコンセプトを理解しはじめると、お互いの天然な一面が見られるように。一方の伝えたいメッセージに気づかず、ずっと放置したままにしてしまったり、相手の意味不明なジェスチャーに思わず笑ってしまったりと、ゆるい雰囲気の中で段々とボケとツッコミの応酬が続く配信となっていた。はじめてのサシコラボでありながら、これだけ打ち解けた状態でいられたのは、このゲームの雰囲気の影響によるところが大きいだろう。2人のゲーム配信は、パズルをクリアするというより、パズルで遊ぶといった雰囲気に見えた。
やればやるほどハマっていく面白さ
『How to Fish』は、最大4名のマルチプレイに対応した物理演算ベースの釣りゲームだ。基本的には、釣り竿で魚を釣って、捌いて、売るという非常にシンプルなルールだが、魚を釣り上げるほどに魚側の凶暴さが増し、こちらも銃などの武器を使えるようになるため、段々とサバイバルゲームのような雰囲気になっていく。その内容がSNSでも話題となり、2日間で100万ダウンロードを記録したというニュースも出ている。また上述のとおり、物理演算ベースとなっているためプレイヤーの予期せぬ挙動が数多く発生するのも大きな特徴だろう。
こうしたゲーム性とチープさを感じさせるデザインから、VTuberには“おバカゲー”といったかたちで取り上げられる本作だが、実際にゲームをプレイしてみると、使える武器の幅がとても広く、襲ってくる敵の難易度も配信に丁度よいくらいの適度な難しさに設定されているため、後半になるにつれ、どのVTuberもかなり真剣にプレイするようになってくる。
ホロライブの兎田ぺこらさんのコラボ配信はその分かりやすい例だった。綺々羅々ヴィヴィさん、獅白ぼたんさんと始めた配信では、最初にお互いのアバターの姿を見て茶化しあったり、鳥に攫われてパニックになったりと、このゲームのトンチキな要素に顔をほころばせながら取り組んでいたが、ゲームが進行し、難易度が上がっていくと、お互いに声をかけながらの連携が必要になり、3人の声色も真剣なものに。気が付くと、本格的な銃撃ゲームを遊んでいるときのような雰囲気へと変わっていった。結果的にゲームプレイに不慣れな綺々羅々ヴィヴィさんに厳しくツッコミを入れながらも、蘇生したりアイテムを与えたりして、しっかりとサポートする兎田ぺこらさんの立ち振る舞いがとても印象的な配信だ。
ゲームにある“スキ”が配信の見せ場をつくる
今回紹介したようなフレンドスロップ系のゲームが。VTuber配信のコラボの定番として、よく採用されている背景には、もちろん価格が安価であることや大人数のコラボが気軽にできること、誰でも分かりやすいシンプルなルールになっていること等が挙げられる。
それに加えて、今回紹介してきたように、ゲームのデザインやルールにスキがあることも人気の容認になっていると考えられる。気軽に失敗してもよい、クリアではなく遊ぶことが重要といったコンセプトが垣間見える『Pratfall』や『Big Walk』は、配信中に和やかな雰囲気をつくりやすいよう調整されている点が特徴で、距離感が掴み切れない間柄であっても徐々に打ち解けあえるようになっている。
一方で『How to Fish』のように表面上は弄りやすいようなスキをつくっておきながら、骨太なゲーム体験でユーザーを夢中にさせていくゲームもあり、ひとくちにフレンドスロップと言っても、それぞれの戦略は多様であることが分かる。
こういったゲームがにわかに人気を集めるようになった際に注目したいのは、そのゲームに、VTuberやストリーマーがどのように反応し、没入していくかといった過程の部分だ。その過程を細かくひも解いていくことで「人と人とが出会える場で、どのような遊びであれば楽しめるのか」といったことのヒントが見えてくるはずだ。引き続き、VTuber・ストリーマーとゲームの関係性について、追っていきたい。
CONSULTING / DEVELOPMENT
コンサルティング・開発サービス
Moguraの知見を、あなたのプロジェクトに
Moguraの知見を、あなたのビジネスに
編集長の久保田を筆頭に、XR/メタバースなどバーチャル領域を知り尽くす専門チームが、リサーチからコンサルティング、企画、開発までを一貫支援。
Mogura VRで培った豊富な情報力と業界ネットワークを強みに、企業・行政機関の成果につながる最適な解決策をご提案します。





