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いまから「聞き上手」になって、いつもの会話を弾ませる技術

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いまから「聞き上手」になって、いつもの会話を弾ませる技術
Photo: 印南敦史
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『あなたの花は明日咲く』(鈴木秀子著、文春新書)の著者は、50万人を超える人々と対話を重ねてきたシスター。

興味深いのは、そうした実績を軸とした発言です。近年は「話す」ことよりも「聞く(聴く)」ことへと比重が移り、いかに「聞き上手」になるかがコミュニケーションの最重要テーマになってきたと指摘しています。

そこで本書では、自らが実践する「聴き方」をさまざまな具体例を通して紹介しているわけです。

あなたの話し相手が、何かの悩みや問題を抱えていたり、憂鬱感や閉塞感を感じているときは、「聞く」ことの価値はさらに増す。その場合、「聞く」というより「聴く」、つまりじっくり耳を傾けて聞くことが重要となる。いわゆる「アクティブ・リスニング=傾聴法」と呼ばれる聞き方だ。相手の言うことを、否定も肯定もせず、ひたすら共感をもって受けとめてゆくのである。(「はじめに」より)

もちろん多くの人は基本的に、人の話を聞くよりも、自分の話をするほうを好むはず。しかし対話の目的が「互いの思いを理解し合ったり、情報を共有すること」なら、私たちはもっと「聞く」ことの価値を認識しなければならないのです。

ここで、はっきり言えることは、もしあなたが「聞く」技能を高めたならば、対話の成果は、現在よりはるかに大きなものになるということだ。(「はじめに」より)

こうした考え方を軸とした本書のなかから、きょうは「聞き上手な人は何をしているか」という項目に焦点を当ててみたいと思います。

聞き上手な人

世の中には、「聞き上手」と評価される人たちがいる。その人の前に行くと「話したい」という思いが高まり、ふだん話さないことまでしゃべってしまう。話し終わると、何か満ち足りた思いを味わい、また話をしたいと思う。ただ話を聞いているだけなのに、多くの人に好かれ、信頼される。それが聞き上手の醍醐味である。(140ページより)

たしかに、そういう人はいるものです。この文章を読んでいるとき、私の脳裏にも数日前に会った“聞き上手な知人”の顔が浮かびました。

当然ながら聞き上手の人は、無闇に話をしたりはしません。そして「あいづち上手」であり、「質問上手」でもあるようです。ちなみに著者によれば、質問は使い方次第で大きな効果を発揮するそう。また、話をしないことと、あいづちや質問が上手なことには密接な関係があるのだともいいます。

意識が話すほうに向いてしまえば、聞くことはおろそかになりがち。しかし聞き上手は、聞くことに意識を集中させるため、あいづちや質問が的確に行えるのです。

重要なのは、聞くことに意識を集中させるためには、相手の意見を判断を加えずに聞く能力が必要だということだ。

相手の話をじっくり聞こうと思いながら、つい口を挟みたくなるのは、相手の言うことが明らかに間違っていると感じるときである。そこから議論が始まり、話すことに精力が費やされることになる。(140〜141ページより)

もちろん、議論や討論が悪いわけではありません。ただし、聞き上手の対話と、議論や討論は、対極に位置するものだというのです。したがって、聞くことに徹しようとするなら、話し手の意見に対して判断をくださないことが大切。ただ、「なるほど、この人はそう言っているんだ」ということだけを受けとめ、あいづちを打ち、必要に応じて質問をすればいいのです。(140ページより)

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聴く姿勢としぐさ

自分が話をしているとき、相手が身体をこちらに向け、じっと見つめて聞いていたなら、「一所懸命聞いてくれている」という実感を持つことができ、話すことに張り合いを感じるはず。

しかし、相手の身体の方向が自分からずれていたり、きょろきょろよそ見をしていたり、別のことを考えているように見えたりすれば、「私の話に興味がないのでは?」「ほかになにか心配事があるのかもしれない」という思いが生まれ、話をする意欲は低下してしまいます。

こうした、会話の際の姿勢やしぐさ、表情などを、心理学では「ノンバーバル(非言語)メッセージ」と呼び、こうした非言語的なレベルでの意思の疎通は「ノンバーバル・コミュニケーション」と呼ばれます。

アメリカの心理学者で、コミュニケーション学の権威であるアルバート・メラビアンは、対面コミュニケーションにおける「知覚される態度」への寄与度は、言語内容が7パーセント、音声が38パーセント、表情・視線・身体の動き・外観などが55パーセントであるとした。「メラビアンの公式」と呼ばれるものである。

コミュニケーションというと、すぐ言葉による伝達と考えがちであるが、実際には、無意識のうちにつかみとるもののほうが、言葉よりはるかに大きな比重を占めている。初対面の人が、まだ口をきかないうちに、その人を分かったような気になるのは、「印象」という、言語外のものによるのである。(142〜143ページより)

メラビアンの主張は言語情報(バーバル・メッセージ)を軽視しすぎているきらいがあるものの、それでもノンバーバル・コミュニケーションの重要度は、一般に認識されているレベルよりかなり高いといえる。著者はそう述べています。

また「聞く」という行為においては、ノンバーバル・コミュニケーションのなかでも「うなずき」という動作の存在感が非常に大きいようです。

うなずきの首の振り方や表情によって、伝わるメッセージはかなり異なります。たとえばこちらが重要なメッセージを伝えたとき、相手が大きくうなずけば、「この人は私の話の勘どころをつかんでいる」と感じることでしょう。しかし、こちらがたいして重要だとは思っていない箇所でうなずいたとしたら、「あれ、わかってるのかな?」と不安を感じるかもしれません。

そんなことからもわかるように、聞き手の首の振り方の度合いとタイミングに、話し手の意欲や満足度は大きく左右されるわけです。

自分がおもしろい話をしているつもりのときに相手が笑ってくれれば、「この話をおもしろいと思ってくれている」と感じるし、同意を求めるメッセージを伝えたときに、相手が笑顔でうなずけば「同意してくれたんだな」という満足感を得ることができるでしょう。

つまり聞き手が言葉を発しなくても、ノンバーバル・コミュニケーションが適切であれば、話し手は手応えを感じ、会話の意欲を高めていくことになるのです。(141ページより)


対話には、さまざまな目的があります。ビジネスの現場での商談は、互いのニーズをすり合わせ、契約を成立させるためのもの。職場での上司と部下の対話は、報告や相談によって情報を共有し、業務を推進するためにあるわけです。そこで本書を参考にしながら「聴き方」を身につけ、日々のコミュニケーションに活用したいところです。

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作家、書評家、音楽評論家

印南敦史

1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

Source: 文春新書

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