
スマホのバッテリー最大容量が80%を切ったら交換時…なんて言いますが、まだ80%はあるじゃん?と思ってたんです。でも、それはスマホだけではないようで。
ドイツのスタートアップが、電動スクーターのお古の電池を112個つないで蓄電池を作ったそうです。
やってのけたのは、フライブルクのスタートアップ「EDENenergy(エデンエナジー)」。フラウンホーファーISE(太陽エネルギーシステム研究所)の元研究者3人が立ち上げた会社です。
できあがったのは、容量70kWhの産業用蓄電システム。ホンダの新しいEV「インサイト」のバッテリーとほぼ同じ量(68.8kWh)の電気を貯めておけます。
お古なのに9割も残ってた

中古の電池なんだから、だいぶヘタっているはず…と思いました。実はEDENenergyも同じ考えだったそうで「残っている容量は新品の80%くらい」と見積もっていたそうです。
ところが、最初の350個を検査してみると、想定よりずっとピンピンしてた。平均の残存容量が90%を大きく超えるケースもあったとか。
そんな電池が、ドイツだけで年間およそ100万個も早々に捨てられているらしいんです。EDENenergyによれば電動アシスト自転車と電動スクーターの合計ですが、数字の出どころは書かれていません。
うーん、もったいないですよね。
クルマの電池は再利用されても、小さいほうは手つかず
EVの電池を蓄電池に回す取り組みは、すでに世界でも動いています。以前にも「容量70%まで落ちたEVバッテリーを蓄電池にする事例」を紹介しましたね。
ところが、小さいほうが扱いやすそうなのに、電動スクーターや電動アシスト自転車のほうは手つかず。理由は、形も、中のセルも、制御のしかたもバラバラだから。まとめて同じように扱えないんですね。
EDENenergyが持ち込んだのは、フラウンホーファーISEで開発した電力制御の技術。CEOのフロリアン・ビアヴィルトさんは、こう説明しています。
「種類の違う電池同士をつないで、それぞれのモジュールと通信できます。電池を分解する必要もありません」
バラさなくていいならラクそう!
ただし、いま現在つないでいるのは同じ種類の電池だけです。シェアサービスの運営会社のように、同じ電池をまとめて出せる大口から仕入れているそう。
違う種類を混ぜるのは、これから。電池が変わるたびにコネクタも、管理システムも、通信のやり方も合わせ直す必要があって、とくに電動アシスト自転車は種類が多いのだとか。
弱ったら、それだけ入れ替えればOK
中古なら、新品より早くダメになるのでは?
EDENenergyの答えは、弱った電池だけを交換するというもの。遠隔で見張っていて、寿命がきたものから入れ替えます。動かしたままでも交換できるそうです。
一般的な蓄電池メーカーの保証は「10年後に元の容量の80%」が標準だそうで、同社はそこを「10年後も70kWh」とうたっています。
中古の電池を100個以上ひとまとめ、と聞くと火事も心配になります。公式サイトによると、CE適合(EUで売るための安全基準を満たした、という印)で、火災報知と消火の装置つきで届くとのこと。
役目を終えた電池は、提携先でリサイクルへ。
売り先はソーラーがあるのに蓄電池がない会社
EDENenergyが狙っている販売先は地元の中堅企業。屋根に太陽光パネルはあるのに、ためておく先がない会社です。10月中旬には、最初の1台をお客さんに納めたとのこと。
他にも、自治体系の電力会社が、電気を使うピークをならしたり、電力の売買に使ったりする道も考えているそう。次の目標は、最大300kWh。EVでいうと4台ぶんちょっとです。
創業者3人に、パートタイムのスタッフが3人。最初の投資家は、自転車リースのJobRadを創業したウルリッヒ・プレディガーさんだとか。自転車の人が、自転車の電池の行き先に張る。なんだか筋が通っています。
日本でも、お古の電池はもう働きはじめてた

日本はどうなのか。調べてみたら、小さめの電池を使い回す試みはちゃんとありました。
オムロンの子会社とホンダは、ホンダの電動スクーターに載る交換式バッテリーを12個まとめて、蓄電池に仕立てています。熊本にあるホンダの工場で、この1〜7月に試したそう。使い終わった電池と新品を、並べて比べたのだとか。
スズキは、廃車から取り出した小型の電池を、ソーラー街灯の電源に。2025年3月には、静岡県磐田市の公共施設にも立ちました。

ヤマハ発動機は、ゴルフカーで使い終えた電池2個を太陽光パネルつきのコンテナに載せて、社用の電動アシスト自転車の充電ステーションにしています。2024年8月から、本社の駐輪場で動いているとのこと。

乗りものを降りた電池が、次の乗りものを充電している。いい眺めです。
電気で走る乗りものが増えるほど、「走り終えた電池」も増えていきます。走れなくなっても、ためることはできる。交換された風力発電機の羽根と同じで、行き先が少しずつ増えてきました。
個人的には、ヤマハ発動機のようなお古の電池の充電ステーションが、街角にも出てきてほしいなぁと。借りて、乗って、最後は充電する側に回る。スマホも充電できちゃったり。
Source: Fraunhofer ISE, Interesting Engineering, EDENenergy, Car Watch, オムロン, ヤマハ発動機, スズキ