
【専門家の目|太田宏介】12年前のシンガポールの記憶
日本サッカー協会(JFA)は11月4日、千葉県内で会見を開き、森保一監督率いる日本代表が臨む今月のシンガポール遠征メンバーを発表した。14日にブラジル代表、17日にパラグアイ代表と対戦する今回のシリーズ。招集された28人の顔ぶれが分かり期待が膨らむなか、かつて同地でのブラジル戦を経験した日本代表OBの太田宏介氏が中立地での試合の難しさを語ったほか、指揮を執るのが最後となる可能性のある森保監督にエールを送った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)
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日本代表がシンガポールでブラジルと戦うのは2014年10月14日以来。12年余りの時が経った。奇しくも当時の会場は、今回と同じシンガポール・ナショナル・スタジアムである。
太田氏はこの試合で先発フル出場を果たすも、結果は0-4と力の差を見せつけられた。全得点を挙げたFWネイマールをはじめ、DFフェリペ・ルイスやMFオスカルなど当時の錚々たるメンバーが名を連ねていたのはもちろんだが、シンガポールという中立地ならではの難しさがあったと振り返る。
「会場を包む空気が少しふわっとしていたように感じました。ワールドカップ予選のような真剣勝負ではなく親善試合であり、現地ファンは興行として観戦しに来たライトな層が多いこともあってかキャーキャーと盛り上がる声が多く、モチベーションを高く維持できなかったですね。プレーするうえで雰囲気が一番難しかった記憶があります。
また、現在は改善したと聞きますが、当時は芝生が緩くて砂も多く、めちゃくちゃストレスを感じました。もうなんか砂場でプレーしているみたいで」
もしかすると、こうした雰囲気やピッチの難しさは今回も日本代表につきまとうかもしれない。
さらに、先月サッカー教室でシンガポールに足を運んだという太田氏は、気象条件が敵になる可能性もあると指摘する。
「少し下がってはきていますが、この時期でも本当に蒸し暑く大量に汗が出ました。なので、シンガポールでの2試合はコンディション的に結構しんどいゲームにはなるかもしれません」
気象条件の問題はそれだけではない。シンガポール大手紙「ザ・ストレーツ・タイムズ」の情報によると、同国では年間平均で176日も落雷・雷雨が確認されるほど、雷が世界的に多い地域。太田氏もサッカー教室の実施場所を屋外から屋内へ急遽変更を余儀なくされたことがあったという。会場となるシンガポール・ナショナル・スタジアムでも落雷警告発令時の行動規範が厳格に定められているため、不測の事態にいかに柔軟に対応できるかもパフォーマンスの鍵を握りそうだ。
それでもシンガポール遠征は、王国ブラジルはさることながら北中米ワールドカップで16強に進んだ難敵パラグアイとも実戦を行える貴重な機会。AFCアジアカップの約1年延期を受け、森保監督にとっては代表の指揮を執る最後の機会となる可能性もある。そんな指揮官に向け、太田氏は今回の遠征に抱く期待をエールとともにこう語る。
「これまでの成績に関係なく、ブラジルには打ち合いになるような積極的な采配を仕掛けて勝ってほしいなと。パラグアイは守備の堅いチームでブロックを敷く戦いをしてくることが予想されますが、これまでの積み重ねを発揮して引いた相手を崩し、連勝で終わってもらいたいですね。そうして森保監督には有終の美を飾ってもらいたいと思います」
中立地特有の問題を乗り越え、ブラジルとパラグアイに連勝し遠征を締めくくることができるか。決戦の時が刻一刻と近づいている。
(FOOTBALL ZONE編集部)

太田宏介
太田宏介(おおた・こうすけ)/1987年7月23日生まれ。東京都出身。FC町田―麻布大学附属渕野辺高―横浜FC―清水エスパルス―FC東京―フィテッセ(オランダ)―FC東京―名古屋―パース・グローリー(オーストラリア)―町田。Jリーグ通算348試合11得点、日本代表通算7試合0得点。左足から繰り出す高精度のキックで、攻撃的サイドバックとして活躍した。明るいキャラクターと豊富な経験を生かし、引退後は出身地のJクラブ町田のアンバサダーに就任。全国各地で無償のサッカー教室を開校するなど、現在は事業を通しサッカー界への“恩返し”を行っている。




