
AGCは11月5日、2027年1月1日付で村野忠之・常務執行役員が社長執行役員CEOに就任する人事を発表した。同3月の株主総会、取締役会での決議を経て代表取締役となる。
2021年から6年間トップを務めた平井良典社長は、1月のタイミングで代表権を持つ会長職に就く。
「戦略事業の成長はある程度図れたものの、コア事業を安定化することができなかった」
平井氏は5日の会見で、自らの任期をこう振り返った。既存事業の深化と新規事業の探索の「両利き経営」で知られるAGCだが、不確実性の高い時代の荒波の中で、ここ数年苦戦が続いてきた。
成長の一方、残った「コア事業の不安定さ」

AGCは、建材用ガラスなどの既存の事業を「コア事業」、半導体部材を取り扱うエレクトロニクスやバイオ医薬品の開発・製造受託(CDMO)を中心としたライフサイエンスなどの新たな成長分野を「戦略事業」と位置づけ、事業ポートフォリオの変革を進めてきた。
平井氏によると、この10年間で戦略事業は売上高の4分の1、営業利益の半分以上を占めるまでに成長した。一方で、コア事業は市況変動の影響を受けやすく、長期安定的な収益基盤にするという目標は達成できなかったという。
さかのぼれば、平井氏の任期はコロナ禍真っ最中の2021年1月から始まった。その後、2022年にはロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格の高騰。コロナ禍からの回復期には中国経済の停滞など、外部環境の変化が相次いだ。
平井氏はこうした変動の影響を受けやすい事業構造が、直近の業績予想の下方修正にもつながったとの認識を示した。
「本当に勝ち続けられるのか」を全事業で議論

次期社長の村野氏は1989年に旧旭硝子に入社。自動車ガラスを中心に、電子、経営企画など幅広い分野を経験し、2024年からはライフサイエンス事業を率いてきた。
村野氏は記者会見の中で、AGCの強みは幅広い技術やグローバルな人材、そして顧客との長年の信頼関係を挙げた。一方、「そういったアセットを十分に活用できていない」とも指摘。事業や地域の垣根を越え、技術と人材をつなぐことで新たな価値を生み出していくことが一つの大きなミッションだと語った。
コア事業の強靱化に向けては、生産性向上などは全社的に進めていきながら、場合によっては他社と連携した取り組みなども選択肢とする。市場や開発現場との距離を近づけて、経営のスピードを上げていきたい考えを示した。
また、村瀬氏は過去の事業拡大について、AGCがその事業を担うベストオーナーなのか「議論が緩かった部分があった」と率直に振り返った上で、今後、コア事業の強靭化を進めていく上で、単にリストラや構造改革に踏み切るのではなく「本当に我々がこの事業で勝ち続けられるのかという議論を徹底的に、全ての事業でやっていこうと考えています」とした。
前期は最終黒字に回復も、今期予想を下方修正

2025年12月期の連結決算では、売上高が前期比0.4%減の2兆588億円、営業利益が同1.3%増の1275億円だったAGC。純利益は692億円となり、前期の940億円の赤字から黒字に転換していた。
11月5日に発表した2026年12月期第3四半期決算では、通期業績予想の下方修正を発表。
売上高予想は2兆2000億円に据え置いた一方、営業利益は1500億円から1200億円に、当期純利益は770億円から400億円に引き下げた。最終利益は前期比で42.2%減となる見通しだ。
北米・欧州の自動車関連事業での製造コスト上昇や、建築ガラス事業の停滞、エネルギー価格高騰によるコスト上昇などが営業利益を押し下げた。ライフサイエンス事業でも、生産開始の遅れにともなうバイオ医薬品CDMOの販売数量未達などが修正要因となった。
