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「危機感がないのは議員がバカだからではない」──バーニー・サンダースが語るAIと民主主義|The Big Interview

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バーニー・サンダースを信じるのは難しい。

長年バーモント州選出の上院議員を務める政治家なんて、嘘つきに決まってるということではない。確かに彼は職業政治家だが、進歩派の旗手である84歳の彼の名と結びついているのは、政治スキャンダルよりもネットミームのほうだ。

サンダースを信じるのが難しいのは、米国は根本から変われるのだと何十年ものあいだ国民に語り続けながら彼が掲げてきた政策が、現状からあまりにもかけ離れていて実現の見込みなどほとんどないように思えるからだ。

例えば彼は、ビリオネアを統制下に置きたい。国が運営する全国民向けの医療制度も導入したい。サンダースの思いどおりになるなら、大学の授業料など存在しない。

物事は変わる。わたしもそう信じているし、『WIRED』もその考えを支持している。だが、そこまで変われるのか? この国が? 本当に、バーニー?

だがサンダースはいま、その実現が難しそうな改革の山に、さらにもうひとつ大きな課題を積み加えようとしている。

2023年以降、彼はAI業界に対する強力で断固たる規制の必要性を訴えて続けてきた。26年3月には、盟友アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員と共に、一連の安全措置が整備されるまでデータセンターの建設を停止する法案を提出した。

さらに6月に彼が法案を発表した「米国AI国富ファンド法」は、AI業界で最大級の企業に事実上課税することで、その収入を国民へ直接給付する仕組みを設けようとするものだ。わたしはそうした法案をはじめ、広くAIについてのサンダースの考えを聞いてみたいと思った。

だがもっと深いレベルで言えば、規制を阻む壁──テック・オリガルヒたちや巨額の資金をもつ特別政治活動委員会(スーパーPAC)、国を統治することよりも、テクノロジーを利用して自らをさらに富ませることに熱心な連邦政権など──を彼がどう見ているのか、そんな打開不可能に思える障害を本当に乗り越えられると考えているのかが知りたかった。

何カ月もしつこく取材申し込みを続けた末、サンダースはついに応じてくれた。こうしてわたしはワシントンDCにある彼のシンプルな事務所を訪れ、思慮深く、誠実で、相変わらず歯に衣着せぬ物言いの彼が、「人類史上最も重大で変革的な技術」と呼ぶものについて考えをめぐらせる様子をこの目で直に見ることができた。

サンダースと話をしたのは、ニューヨーク州の民主党予備選が行なわれている最中の6月23日火曜日だった。

翌朝、前日の会話が頭の中で反響するのを感じながら目を覚ますと、民主社会主義を支持する候補者グループがそれぞれの選挙区で圧勝し、民主党の重鎮たちは、自らの存在意義を揺るがすほどの混乱に陥っていた。

さらに数時間後には、下院エネルギー・商業委員会の民主党筆頭委員であるニュージャージー州選出のフランク・パローン下院議員が、党内の体制派の大物のうちでは初めてAIデータセンター建設の一時停止を公に支持した。

超富裕層のエリートたちがそう簡単に姿を消すことはない。大統領も、その無能な取り巻き連中も、そう簡単にはいなくならない。兆単位の富を築き、選挙を金で動かし、あの忌々しいデータセンターを建てる──この国では、その絡み合った権力の根は深い。

だが、党派を超えた大多数の国民の怒りは、まもなくそれよりもさらに深いものになるかもしれない。全米各地の住民集会ではデータセンター建設に反対の声が上がっている。全国規模の抗議デモには数百万人が集まる。そしてニューヨークでもほかの国内各地でも、有権者は投票所で既成勢力の候補者に背を向けている。

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何かが壊れ始めているようだ。いや、何かが壊れなければならないのだ。バーニー・サンダースを信じる? わたしは信じ始めているかもしれない。

※インタビューは長さと明瞭性を考慮して編集されています。


WIRED:サンダース議員、本日はお時間をいただきありがとうございます。

バーニー・サンダース:こちらこそ。

──ありがとうございます。それではまず、AIに関して提案されている国富ファンドについて伺いたいと思います。どのような仕組みなのでしょうか。

では、その話をしましょう。

──お願いします。

AI国富ファンドとは何か

サンダース:その前に、少し話を遡ります。わたしがデータセンター建設の一時停止と国富ファンドを提唱し始めた理由は、誰もが知っているとおり、人工知能(AI)(イーロン・)マスクや(ジェフ・)ベゾス(マーク・)ザッカーバーグのような世界屈指の裕福な人間たちによって推し進められており、一般人のニーズなど気にもかけられていないことにあります。

AIは人類史上最も重大で、社会を最も大きく変革しうる技術です。なのにそれを推し進めているのは、他人のことなどお構いなしで、自分がさらなる富と権力を得ることしか考えていない人間たちです。こんな状況は終わらせなければなりません。

わたしを憂慮させるのは、議会の状況です。これほど生活のあらゆる側面に影響を及ぼす革命的な技術について、大規模な議論が起きてしかるべきでしょう? 委員会だって「大変だ、こんな法案が提出されるなんて、どう対応すべきなんだ?」などと騒いでいるはずです。けれども、現実はゼロです。何も起きていません。今日に至るまで、AIに対処する重要な法案はひとつも成立していません。

そこでわたしたちが何をしたか。ふたつのことをしました。まずは「ちょっと待て」です。いまや全米各地、いや、世界中でデータセンターが建てられている。そしてそれは地域の環境や電気料金などに大きな悪影響を及ぼしている。だからペースを落とそう、一般市民を守るための指針や法律が整うまでは建設を一時停止しよう、と。

そして、AI国富ファンドの提案です。このファンドにはふたつの役割があります。

何よりも重要なのは、これほど社会を一変させうる問題について、人類の未来をほんのひと握りのビリオネアに決めさせないということです。

そのためにAI産業の半分は国民が所有するのです。つまり、取締役会の半分を市民の代表が占めるべきだということです。そうして、大量失業を招いたり、子どもの福祉や人々のプライバシーを脅かしたりするような提案や技術が出てきたときに、取締役の半数が「悪いがそれはだめだ。そんな案は認められない」と言えることです。

もうひとつは、わたしが予想するようにAIがますます儲かる産業になり、いっそう莫大な富をもたらすようになっても、その金がひと握りの超富裕層だけに流れるようにはさせないということです。

AIは何を基盤にしているのか? AIの土台とは何なのか? それは、人類の知識であり、人々の仕事です。人が書いた本、詩、化学研究を取り込んでいるのです。

──以前には『WIRED』に記事を寄稿していただいたこともあります。AIはあなたのその記事も取り込んでいるんですよね。

そのとおり。それに対して、あなた方はいくらの対価を受け取りましたか?

──ライターも、会社も、雑誌も、受け取ったのは0ドルです。

0ドル。

重要なのは、それこそがAIの土台だということです。だからその利益は国民にも還元されるべきなのです。つまり、AIによって生み出される収益や富の増加分の半分は国民にも渡るべきです。

──国富ファンドにそういった上場企業が拠出するということですね?

そうです。

──マイクロソフトグーグルなどですね。

年間総収入2億ドル以上の大企業が対象です。

──先ほど、議会についてお話しされました。そこで見られる危機感の欠如について。わたしとしては、テクノロジーをめぐる政治家の危機感の欠如は何十年も前から続いてきたように思えます。そこで伺いたいのは……

テクノロジーだけの話じゃありません。ほかの多くの問題についても同じです。

──確かに、ほかの問題についてもそうですね。でも、わたしは特にテクノロジーに注目しています。現在、国富ファンドという構想に対する支持はどの程度あるとお考えですか? また、この国でその構想を実現するには何が必要でしょうか?

いいですか、すべては政治なんです。

あなたが連邦議会議員で、「有権者と話をしたい。子どものメンタルヘルスへの影響が心配だし、雇用への影響も心配だ。何か対策を講じるべきではないか」と言ったとしましょう。そのときあなたが選挙に出ていたら何が起こると思いますか? 翌日には、あなたを攻撃する30秒の選挙CMが数百万ドル分流れます。

──なるほど。

つまり、危機感がないと言っても、それは議員たちがバカだからではないのです。大半はバカではない。怖いんですよ。政治家でいたい、再選されたいと思うからです。

実際、民主党のある議員は、「あの問題には近づかないほうがいいだろう。考えないほうがいい」と言っていました。この問題について語り始め、進むべき方向について理にかなった提案をすれば、AI業界に標的にされるからです。AI業界は次の中間選挙で何億ドルもの資金を投入するでしょう。すでに世界中の金を手にしているようなものですからね。

こうした理由で、危機感が見られないのです。だからこそ、選挙をめぐる金の仕組みを根本から改革しなければならない。シチズンズ・ユナイテッド対FEC裁判[編註:企業などによる政治支出の上限を取り払った判決]を覆し、スーパーPACをなくさなければなりません。

AIが人間から奪うもの

──やるべきことがまだ山ほどありますね。わたしはアレックス・ボレスにもインタビューしたのですが、ニューヨーク州の予備選当日である今日は彼にとって重要な日です。まさにあなたがおっしゃった理由で、彼の落選を狙って多額の資金が投じられました。

ただ、テクノロジーについては、わたしも議員たちがバカだとは思いません。少なくとも大半は。むしろ多くは賢いと思います。本来はきちんと監督すべき、理想的には何らかのかたちで規制すべきテクノロジーについて、議員たちは理解していると思いますか?

これはとても大きなテーマですからね。議員たちも一部は理解していると思いますよ。

例えば、多くの議員は子どもへの影響を心配しています。ボットに助言されて子どもが自殺したという痛ましい話も耳にしていますから。そういう話にはみんな感情的に反応します。子どもたちがいわゆる「AIコンパニオン」とのやりとりに時間を費やしすぎていることへの懸念ですね。

──ええ。

この点の問題意識は多くの議員がもっています。AIが雇用に与える影響についてもいくらかは議論されていますが、活発ではありません。

こんなふうに言う人たちもいます。「まあ、それはどんな技術でも同じさ。鍛冶屋はほとんどいなくなったし、エレベーター係も姿を消した。時代は変わるんだよ、バーニー。今回も同じだ。仕事は失われるが、一方で新しい仕事もたくさん生まれる」

──なるほど。

でも、本当にそのとおりなのかは疑問です。

これから何が起きるのか、誰にも正確にはわかりません。ひとつ例を挙げれば、トラックやタクシー、UberLyftなどのドライバーとして働く人は600万~800万人いますよね。

あなたも自動運転車には乗ったことがあるでしょう。

──3、4回あります。

わたしも乗りました。

──どう思いましたか?

乗ってみるべきですよ。非常によくできています。

──ですよね。

そしていま、テキサスでは無人の18輪トラックが道路を走っています。これから何が起きるでしょうか? この技術が全米の都市や州へ広がったら、いまトラックを運転している50歳の人たちはどうなるでしょう? どこへ行けばいい? どんな仕事に就ける? プログラマーにでもなれると思いますか? わたしは思いません。

──難しいでしょうね。

そうした仕事は失われるでしょう。この問題を本気で掘り下げて考えた人はいるのでしょうか? さらに実際、これは単なる雇用喪失よりもっと根深い問題です。わたしたち人間同士の関係や、人間としてのあり方そのものが変えられようとしています。

マスクはよく嘘をつくし、売り込みがうまいでしょう。

──よく嘘をつきますよね。

よく嘘をつきます。

──意見が合いましたね。彼はしょっちゅう嘘をついています。

そして、売り込みもうまい。まあ、彼は彼なりのやり方をしているわけです。けれども、マスクは資産も影響力も世界一の男です。そんな彼が、「仕事はいずれなくなる。AIとロボットがあらゆることを人間よりうまくやるようになるんだから」と言っています。

その半分くらいは本当なのでしょうか? そうかもしれないし、わたしにはわかりません。でも、そのときわたしたちはどうするのでしょう。生活はどうなる? 生きる目的は何になる? 子どもたちは一日中マスクの動画を見て、自分は家にいてどこかから送られてくる給付金を受け取るだけ、そんな社会になるのでしょうか?

まだ誰にもわかりません。人は働いていなければ税金を納めません。税金が納められなければ、社会保障制度もメディケアも成り立ちません。では、誰がその給付金を出すのでしょうか? あなたはわたしの議員仲間の多くがこの疑問について議会で質問していると思うでしょう? わたしはそうは思いません。さらに、プライバシーの問題もあります。インターネットを使うたび、誰かがあなたについて何かを知ることになるでしょう。

病院へ行けば、あなたの処方にも銀行口座の情報にも誰かがアクセスできるようになる。それからもうひとつ、政治家として言っておきたいことがあります。わたし自身にも起きたことで、あなたにも経験があるかどうかはわかりませんが、ディープフェイクは本当に巧妙になっています。こういう番組に出演しているときなどの映像を切り取り、まったく別の発言をしているようにつくり替えられてしまう。そして、ほとんどの人はそれが偽物だと気づかないでしょう。

──実は、自分のディープフェイクをつくってもらったことがあるんです。どこまでできるのか確かめたくて。そしてそれを、『WIRED』の発行元であるコンデナストの全社員の前で披露しました。不気味なほど自然でした。とても面白かったけど、恐ろしくもありました。

うまくいきましたか?

──みんな本物だと思っていました。そして実際にわたしが壇上に出て、「わたし」がふたりの状態になったんです! もちろん、これが悪意のある目的で使われたらとても怖いことです。

もうそういう事例はありますからね。すでに始まっている。ケンタッキー州選出のマッシー議員の件を覚えていますか? 彼がふたりの女性とホテルの部屋に入っていくディープフェイク動画が出回りました。あれはかなりリアルでした。そういうものにどう対処すればいいのか。

部屋の中に象がいる

──あなたはAIが社会を一変させる技術だと強く確信されていて、わたしもそう思います。その考えに至った背景は何だったのでしょうか? この数年でAIに対する見方は変化しましたか?

わたしの考え方はいつも少し変わっていますが、本気でこの問題に取り組もうと思ったきっかけは、先ほど話したことです。「部屋の中に象がいるじゃないか、誰もあの象が見えないというのか?」 という感覚です。

AIがどれほど社会を変えるのか、変革がいつ起こるのかについては、人によって意見が違うでしょう。誰も正確にはわかりません。でも、AIが変革をもたらすということ自体は誰も否定しません。わたしは米国上院議員として、「誰かこのことについて議論しているか? 考えているのか?」と聞いてまわりました。しかし、まったく議論されていなかった。それで火がついたんです。そして、(コンピューター科学者の)ジェフリー・ヒントンのような人たちと話をするようになりました。

──なるほど。

ヒントンをご存じですか?

──はい。

ノーベル物理学賞の受賞者です。25年、ジョージタウン大学で彼と対話集会を開いたとき、彼はこう言っていました。AIが人間より賢くなれば……彼の言葉を勝手に補いたくはないのですが、つまり、人間のコントロールから独立する可能性が十分にあり、破滅的な結果も招きうると言っていました。

ノーベル賞受賞者で、AIのゴッドファーザーのひとりでもある人物がそう言っているわけです。ほかにも同じ懸念を語る人たちはいます。たとえその可能性が5%であれ、3%であれ、8%であれ、これは人類全体の未来に関わる話なのだから、誰かが立ち上がって「ちょっと待ってください、何か対策すべきではありませんか」と言ってもいいはずでしょう。

でも、そんなことは起きていません。だからわたしはこの問題に取り組もうと思ったんです。そしていろんな人と話をして、あなたの表現を借りれば、危機感の欠如に驚きました。

──だからいま、あなたは変化を起こそうと……

そうです。わたしみたいなオタク人間がね。いや、むしろオタクとは逆か。この技術については何も知りませんから。家のテレビを操作するのにも苦労するくらいですよ。でも、誰かがやらなければならないんです。

──米国民が感じている大きな不満のひとつは──もちろんすべての人の意見ではありませんが、多くの人を取材してきたなかで感じるのは──AIが自分たちに押しつけられているという感覚です。マスクやサム・アルトマンのようなオリガルヒが、AIは避けられない未来なんだと言ってくる。自分たちには選択権もないし、行く先をコントロールする力もない、そう感じているのです。このことについてどうお考えですか?

おっしゃるとおりだと思います。そしていま、その反発はいくつかのかたちとなってで現れ始めています。第一に、1年前にはあなたもわたしもデータセンターに対して市民からこれほどの反対運動が起きるとは思っていなかったでしょう。

──ええ。

人々がまず抱いた懸念は、「電気代が上がるのは嫌だ」「騒音がひどい」「景観が壊れる」「地域の環境が破壊される」といったことです。それに加え、「こんなものをつくっていったい何になるんだ? あの巨大な施設が将来的にうちの子から仕事を奪うんじゃないか?」という声も出ています。

あなたの指摘はまさに正しい。議会でおそらく誰よりもオリガルヒたちと闘ってきた立場として言いますが、あの人たちは途方もない富と権力を使って計画をどんどん押し進めています。

どういうわけか、米国ではすべての国民に医療を保障できない。医師や看護師を増やすこともできず、ほかの先進国が当たり前にやっていることを実現することもできない。その一方で、何百ものデータセンターを建てて、たった数年で人類社会を変えてしまうことはできるらしい。なぜなのか?

全国民に医療が保障されるということは、どういうことか? それは、人々の暮らしがよくなるということです。わたしたちにはそれなりの教育を受けています。では米国は最高の教育制度を設けるべきなのか? そしてそれは可能なのか? もちろん可能です。でも、それはマスクの目標ではない。あの人たちはまったく異なる価値観で動いていますから。

あの人たちは非常に頭が切れて、攻撃的で、優秀な実業家です。そして、自分たちのやりたいことをとにかく押し通そうとしている。自分の望む世界をつくろうとしているんです。そのなかで普通の人々は何もできず、「その世界は、わたしに、わが子に、環境にどんな未来をもたらすのだろう?」と呟いています。けれども、その声は届かない。なぜなら、腐敗した政治制度の話に戻りますが、ワシントンで政治を動かしているのは金だからです。

データセンターは政治と金の象徴

──人々にとって、データセンターはまさにその象徴なのでしょうね。環境問題、騒音、地域社会への影響も確かにある。でも取材をしていて感じるのは、それ以上に、自分たちに決定権がない状況を体現しているということです。あなたもそう思われますか? 国民と話すとき、そんな話は聞きますか?

もちろん。実際にこういうことが起きています。世界屈指の富と力をもつ企業が、弁護士や政治家やらを引き連れて小さな町にやって来て、町の行政委員会と交渉する。つまり、ボランティアで町政をやっている5人ほどの委員が、莫大な資金力をもつ世界最強クラスの企業を相手にすることになる。

しかも企業は委員たちに秘密保持契約を結ばせるので、住民は自分たちの町で何が起きているのかわからない。自分たちの小さな地域社会においてさえも富と権力の格差を突き付けられ、それに怒りを募らせているのだと思います。

──どうすれば責任あるかたちでのデータセンター導入ができると思いますか?

まずは立ち止まって考えることが必要だと思います。突飛な意見に聞こえるかもしれませんが。

暮らしをよくするためにAIはどう使われるべきか? あなたたちはどう思うのか? 医療の分野で役立つ? 医師が診断や処方をする上で助けになる? もちろんだ。それならみんな、やろうじゃないか。

だが、米国の製造業の仕事を大量に奪うことになるんじゃないか? それでいいのか? いいやバーニー、それはいい考えじゃないだろう。

子どもをAIボットに夢中にさせるのはどうだ? いいやバーニー、それは危険だ。怖いことだよ。

プライバシーが完全に侵害されるのはどうか? いいことだと思う? いいや、自分のプライバシーは大切にしたい。

AIの時代にこうした問題にわたしたちはどう対処すべきなのでしょうか? もし「いまあなたは週に50時間や40時間働いていますね。AIのおかげでそれが20時間や30時間に減り、給料はそのままだとしたら?」と人々に尋ねたとします。訊かれた人は「それなら賛成です」と言うでしょう。

──わたしも賛成ですね。

ええ、みんなそうでしょう。

──わたし自身は働くのが大好きですが、おっしゃりたいことはわかります。

あなたには長い時間働いてもらいましょう。

──ありがとうございます。

AIが富を生み出すのなら、その富はあなたにもほかの人たちにも、わたしの孫たちにももたらされるべきではないでしょうか。それとも、マスクとその仲間だけが受け取ればいいのでしょうか? この問いには国民の9割がわたしたちに賛同してくれると思います。

テック・オリガルヒたち

──あなたはマスクのような人たちとたくさん接するタイプではないと思いますが……。

ないですね。

──ですよね、それでも最近サム・アルトマンとお会いになっていました。国富ファンド構想について1時間ほど話し合われたそうですね。あなたはアルトマンについて「構想にあまり乗り気ではなかった」とおっしゃる一方で、政治的な立ちまわりがうまいと評していました。

ええ。

──実際に会って、どんな印象をもちましたか?

頭の切れる人ですね。

──頭の切れる人。

ええ、とても頭が切れて、人当たりもいい。営業もうまいですね、それが彼の仕事ですから。立ちまわりもうまいと思いますよ。みんな頭のいい人たちです。

数年前までは、「AIは素晴らしい、夢のような技術だ。誰もがその恩恵を受けられますよ」と世間に言っていたけれど、いまでは人々がそんな話を信じなくなってきている。すると、サムのような立場の人たちはこう考えるわけです。「さて、どう対処するか?」

「そうだな……米国民に何かを与えなければ。よし、AIによる利益の5%を国民に分配しよう。『わたしたちは善き人間です。これは純粋な善意のかたちです』」

つまり、自分たちの製品とそれが社会にもたらす変化を米国民にうまく売り込む方法を考えなければならないのです。そうした利益還元もひとつの案でしょう。トランプのやり方も同じです。トランプの言うことは一言も信用していませんが、わたしが(国富ファンドの)構想を発表すると、彼は「面白いアイデアだ」と言いました。

──アルトマンやテック企業が議会より先に動く可能性はあるでしょうか? つまり、世間からのイメージがかなり悪くなっていると気づき、国民をなだめるためにはいま以上のことをしなければならない、と判断する可能性です。

そういう動きは出てくると思います。ただ、問題は「わかったよ、そこまで言うなら年間数千ドルやるよ。それでいいだろう」で済む話ではありません。問題は権力なんです。

──そして、権力は手放したくない。

お金と権力は別問題です。

──権力についてもう少し伺いたいと思っていました。ご自身でもおっしゃるとおり、あなたは長年オリガルヒたちと闘ってこられましたね。『WIRED』もこの時代のあの人たちをオリガルヒと呼んでいます。わたしたちもオリガルヒがこの国、この世界に対してもつ影響力、そしてこの国の政治に対してもつ資金力や支配力の大きさを強く懸念しています。

これほど莫大な富を、どうすれば責任あるかたちで統制できるでしょうか? あなたは先日、イーロン・マスクがトリリオネア(兆万長者)になったことを「行動を起こすべき警鐘」と表現されましたね。政府はトリリオネアほどの人物に責任を負わせることができるでしょうか?

実に深い問いですね。つまり、「もう手遅れなんじゃないか?」ということですよね。

──トリリオネアですからね。途方もない富です。

確かにそうです。マスク氏には米国議会よりも大きな権力と影響力があるのか? わたしにはわかりません。調べたことはありませんから。彼ひとりだけでもそれくらいの力はあるかもしれない。そんな人たちに責任を負わせることはできるのか? もちろんマスクだけではありませんが、一例として挙げると、彼はトランプを当選させるために確か2億9,000万ドル(約470億円)ほどを費やしました。

──そうですね。

しかも彼だけではありません。そんな超富裕層がほかに何人もいます。先ほどAIスーパーPACの話もしましたし、あなたはニューヨークのボレスの例を挙げました。でも、これはニューヨークにとどまらず全米で起きている話です。この流れを止めることはできるのか? できるとは思いますが、正直に言えば、そのためには革命と言えるほどの変化が必要でしょう。不安を煽るつもりはありませんが。

よくこんなふうに訊かれます。「バーニー、あなたは老人なのに、どこからそんなに意欲を得ているの? どうやって情熱を保っているの?」と。わたしは全米の各地で、ニューヨーク、バーモント、カリフォルニアなど国内のあらゆる地で、実に素晴らしい若者たちに会ってきました。この国を本気で救いたいと考え、政治に関わろうとしている若者です。

労働組合の人たちにも会っています。一例を挙げると、モンタナ州でわたしの集会に参加したある労働組合員がいて、そのときは労働者が直面している問題について語っていました。その後彼は連邦議会選に立候補し、主流派の候補を破って当選しました。そういうことが実際に起きています。

変化に向けては大変な努力が必要です。あなたの質問への答えは、結局のところ政治にあります。オリガルヒは途方もない富をもち、メディアの大半を支配し、政治制度の大半を支配し、経済も支配しています。数百万人の市民を草の根から動員し、現状に立ち向かわせることができるでしょうか?

答えはわたしにもわかりませんが、そのための努力はしています。まさにそれがわたしの取り組みです。

──その革命とは、どのようなものでしょうか? 組織化、投票、それとも別の何かですか?

投票はとても重要です。でも、投票だけではありません。データセンターの建設が市民の投票や反対運動によって止められている例は実際にあります。いま本当にやるべきことは──つまり、トランプやマスク、ザッカーバーグのような人たちには、この国をどうしたいかという明確なビジョンがあります。ですがわたしたちの側は、それに対抗する別のビジョンを打ち出せていません。

AIには莫大な力があり、富も生み出すでしょう。それを踏まえて、いまわたしたちにどんなビジョンがあるでしょうか? どんな世界、どんな国に住みたいのか? そういう議論が十分なされているでしょうか? もちろん、簡単な議論もあります。ほかの国と同じように、医療を人権として保障すべきです。これは当然のことです。

最低賃金を生活できる水準まで引き上げるべきだ、などもしかり。しかし革命という点では、あの人たちこそが革命家です。トランプはそもそも合衆国憲法を信じていません。だいぶ革命的なことですよ。

──革命的な生き方ですね。

実際には保守派の人たちも多くは、法律を守るべきだ、憲法に従うべきだと考えています。だが、トランプは違う。彼は権威主義者です。

トランプが2期目に就任して最初の外遊でどこに行ったか? ヨーロッパ? いいえ、彼はヨーロッパが嫌いですから。行き先はサウジアラビアでした。覚えていますか?

──はい。

世界で最も裕福な一族が支配する国であり、『Washington Post』の記者を殺害した国です。でも、そんなこと彼はおかまいなしです。独裁です。オリガルヒと権威主義を切り離して考えてはいけません。両者は双子の兄弟です。伝わりますかね?

トランプがUAEやカタールなどに引き寄せられるのには理由があります。莫大な富をもち、民主主義を信じず、そしてAI業界にも非常に深く関わっている国です。

──最後に、何をお聞きしようか考えています。

難しい質問が来るのかな。

中国は“敵”ではない

──国際的な側面が話題に出たので、それに関連して。ここ数年、AIをめぐる議論で大きな争点になっているのが中国です。AI開発を急ぐ理由や規制をしない理由として、中国に勝たなければならないのだという主張が繰り返されています。この国の一部の人にとっては、もはやそれが教義のようになっています。あなたもこの考えを支持しますか?

いいえ。

──詳しくお聞かせください。

われわれはイランと戦争しなければならないと言い、ベトナムとは戦争しなければならなかったと言う。ベトナム戦争は子どものころに実際目にしました。ドミノ理論を掲げて。覚えていますか? イラクとも戦争しなければならないと言っていましたね。なぜか? サダム・フセインが大量破壊兵器をもっているから、と。そしていまはイランと戦争しなければならないと。それから中国にも勝たなければならない。結局のところ、こういう考えの人たちにはいつだって敵が必要なんですよ。

ただし、話はそう単純でもありません。マスクは中国に巨額の投資をしているし、アップルも中国で大規模に事業を展開しています。中国は敵のはずなのに。その矛盾をうまく理屈づけながら。

わたしは政権内の一部を少し不安にさせることをしました。ワシントンで対話集会を開き、そこにはAIに詳しい米国の大物科学者をふたり招いたのですが、中国の科学者ふたりにもオンラインで参加してもらったんです。

驚く人もいるかもしれませんが、中国人がみんな邪悪で恐ろしい人間などということはありません。非常に優秀な人たちがいて、米国人とまったく同じ懸念を抱いています。集会ではとてもいい議論ができました。しかも、かなり信頼できる筋から聞いた話では、ホワイトハウスと中国側のあいだで世界を破滅させないための協議が行なわれる可能性もあるそうです。

冷戦期のうち最も緊張していた時代でさえ、ゴルバチョフやレーガンは核戦争が誰の利益にもならないことを理解していました。中国にもそう理解している人たちはいます。だから中国に勝たなければならないという話も、また勝手に敵をつくり出しているだけなんだと思います。

──つまり、危機感を煽るためにつくられた偽の構図だと。

そうです。「われわれの好きなようにやらせろ。きみたちが暮らす地域社会を破壊するけど仕方ないんだ。中国に勝たなければならないんだから」とね。ほとんどの米国人はそんな話をもう信じていないと思いますが。

子どもたちのために闘い続ける

──さて、最後は少し前向きな話で締めたいと思います。

前向きにいきましょう!

──先ほど、米国の将来のあり方に対するビジョンが欠けているとおっしゃいました。AIをめぐる状況があなたの望む方向へ、サンダース議員にとっての正しい方向へ進んだとしたら、未来はどんな姿をしていますか? 子どもたちはどんな生活をしているでしょうか? うちの子も含めて。

お子さんは何人ですか?

──ひとりです。

うちは4人です。

──あなたのお子さんの未来も大切に思います。

お互いの子どもたちの未来を大切にすべきですね。

──本当に。

質問に対する答えは、正直わかりません。こういう点ではわたしはちょっと保守的なのかもしれませんね。望むのは、貧困や経済的不安のない世界です。わたしは労働者階級の家庭で育ちましたから、その苦労は少なからず知っているつもりです。

いま、労働者階級の人々は富裕層よりも6~7年寿命が短いんです。日々のストレスが原因で。誰もが生活に最低限必要なものを手に入れ、よい教育を受ける機会を与えられ、質の高い医療を受けられる社会をつくることはできるか? 全国に最新設備を備えた病院を建て、AIも医療に役立てる。そういうことは可能なのか? できるでしょう。

しかし、ひとつ言っておきたい。まだ考えはまとまっていないのですが。いまは思いつくままに話しています。わたしは、人間同士が互いに関わり合う力を失ってしまうことをとても心配しています。良くも悪くも、それこそがわれわれ人間に残された唯一のものですから。

マスクのような人たちは効率を何より重視します。ロボットがあなたよりうまく仕事をこなせるなら、あなたはもう必要ない、という発想になる。でも、わたしはそれが優れたトレードオフだとは思いません。

人間らしさや、わたしたちにとって大切なもの、それらを守る術をとても慎重に考えなければなりません。わたしたちには魂があり、感情があり、心がある。ロボットやAIにはないものです。よい質問でした。まだ完全な答えはもっていませんが、まさにこういう問いにこそ向き合うべきです。

──いま多くの人々は、AIが規制されず、テック業界の権力とワシントンでの政治権力が結びつき、ホワイトハウスにドナルド・トランプがいる現状を見ています。そんな状況を前にすると圧倒され、もはや手に負えないように感じ、世の中は何も変えられないんだと思えてしまうかもしれません。人々は何を希望にして変化を信じられるでしょうか?

あなたが描写した感覚はまったくそのとおりです。みんな圧倒されています。さらに気候変動も加わりますしね。いま欧州は史上最悪の熱波に見舞われています。そうやってみんな絶望的な気分で生き始めています。

わたしが言えるのはただひとつ、米国という国家の歴史を振り返ってほしいということです。政治的な話をしたいわけでも、愛国心を語りたいわけでも、ロマンチックなことを言いたいわけでもありません。考えてください、1770年代のことを。教科書で学ぶような時代ですが、驚くほど勇敢な人たちがいました。イングランド王から与えられなかった自由を強く求め、世界最強の軍に立ち向かったのです。

当時の状況を考えれば、トマス・ジェファソンやワシントンに勝ち目があるとは思えなかったでしょう。それでもやり遂げたのです。奴隷制度という忌まわしい悪についても考えてください。奴隷制度廃止運動家たちは、南部だけでなく北部でも闘いました。奴隷制度は道徳に反すると訴え、苦難を耐え抜き、命を落とした、ジョン・ブラウンのような人たちです。

それからマーティン・ルーサー・キングは、わたしが子どものころにはまだ存在していた人種隔離制度に立ち向かいました。そして勝利しました。大恐慌の時代も思い出してください。失業率25%。絶望のなかで生き、農場を追われて都市へ流れた人々。その後、国民から選ばれた大統領が連邦政府の役割を大きく変え、人々を支える政策を始めました。

第二次世界大戦を見てもそうです。わたしたちの親の世代がヒトラーや日本と戦った時代です。1941年当時の米国には、欧州と太平洋という二正面で戦争する準備などまったくありませんでした。しかし2年が経つころには、米国は事実上その戦争に勝利していた。43年から44年には勝敗は決していました。国がひとつになったからです。まさに団結していた。女性は工場で働き、男性は欧州や日本で命を落としていました。

だからわたしは人々にこう言うのです。「この国はこれまで暗い時代を何度も経験してきました。いまも厳しい時代であり、そこに異論の余地はありません」。わたしには、全国を巡って素晴らしい人たちに出会うありがたい機会があります。女性、若者、有色人種を含めた人々が立ち上がり、この国をもっといい国にしようとする姿を見ています。

わたしはこの国を見捨てません。この国は立ち直ることができるはずです。最悪の時代はこれから来るんじゃない、もう過ぎ去ったんです。

──これからも闘い続けるということですね。

しつこくね。

(Originally published on wired.com, transrated by Risa Nagao/Liber, edited by Nobuko Igari)

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