グーグルは10年近く前から、AIアシスタントがユーザーに代わって電話をかける機能の提供を試みてきた。「Duplex」を覚えているだろうか。Google Assistantがレストランに電話をかけ、席を予約できる機能だった。このサービスは数年前に終了したが、今回またグーグルは最新の大規模言語モデル(LLM)を活用し、同様の機能を新たなかたちで実現しようとしている。
Geminiが店舗に電話する
グーグルは9月下旬、最新のPixel 11シリーズ向けに提供する実験的なベータ機能「Call for Me」を発表した。この機能は米国で英語のみ利用できる。Pixel 11の所有者がこの機能を利用するには、Geminiのサブスクリプションに加入し、「Phone by Google」アプリのパブリックベータにも参加する必要がある。
この機能は、主に店舗や企業への電話を想定したものだ。Geminiがユーザーに代わって近所のホームセンターへ電話をかけ、特定の工具の在庫があるか尋ねたり、理容店とやりとりして散髪を予約したりできる。
使い方は、Geminiに電話をかけるよう指示するだけでいい。必要に応じて、Geminiが追加の質問をすることもある。
電話がつながるとチャットボットは名乗り、用件に対応してもらえるよう相手とやりとりする。自動音声の応答につながった場合も案内に従って進めることができ、保留になればそのまま待機する。ユーザーはPixel上で会話の文字起こしをリアルタイムで確認でき、いつでも電話を引き継ぐことが可能だ。
グーグルは、この機能は店舗や企業への電話で最もうまく機能するとしているが、救急や通報など、Geminiが電話をかけない相手もある。とはいえ、特定の電話番号にかけるようGeminiに頼むことは可能だ。例えば、いつも利用しているタトゥーアーティストが、ウェブ上にほとんど情報を掲載していない場合もある。その場合、「Geminiは電話番号を検索しようとしますが、ユーザー自身が番号を提供することもできます」とグーグルの広報担当者は『WIRED』に説明する。こうした通話では、ユーザーが普段、特定のアクセントをもつ音声をGeminiで使用していたとしても、AIアシスタントはGemini Liveでの会話に使われるものと同じ音声を使用する。
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「Call for Me」は、PixelやAndroidでグーグルが提供してきた通話関連のスマート機能をさらに充実させるものだ。グーグルの「電話」アプリにはすでに、AIが代わりに電話へ応対する「通話スクリーニング」機能や、自動音声による迷惑電話や営業電話を遮断する機能がある。「Hold for Me」は、AIアシスタントが保留音を聞き続け、保留が終わって相手側で人が応答すると、ユーザーに電話を取るよう知らせる機能だ。
「Direct My Call」では、自動音声案内の選択肢を、それが読み上げられるより先に画面に表示する。録音された音声がすべての選択肢を読み上げるのを待たずとも、担当者につながる「9」をタップできるというわけだ。リアルタイムの「Scam Detection」機能は、通話相手が詐欺を働いている可能性があると判断すると警告を表示することができる。
広がるAIの電話対応
Duplexが登場した当時と比べ、いまでは音声アシスタントに電話対応を任せることへの抵抗感は薄れている。着信をスクリーニングする機能は広く普及しており、PixelでもサムスンのスマートフォンでもiPhoneでも、端末に搭載されたAIアシスタントが知らない番号からの着信に応答し、用件を尋ねることも珍しくなくなった。
しかし、大きな期待を集めたAI翻訳機能と同じように、この種の機能も期待どおりに動かないことはあり得る。電話では予想外のことが起きるし、相手が単なる迷惑電話だと思って切ってしまう可能性もある。Geminiが相手のアクセントをうまく聞きとれなかったらどうなるのか。店員に何度も聞き返し、同じやりとりを繰り返すことになるのだろうか。店に探している工具がなかった場合、ボットは丁寧に会話を終えられるのか。それとも、いきなり電話を切るのだろうか。
「まさにそうした点を検証していきたいと考えています」とグーグルの広報担当者は話す。「今回の実験を通じて、ユーザーの皆さんにさまざまな状況で試していただき、アクセントの違いや騒がしい環境にも対応できるよう、機能をさらに改善していきたいと考えています」。なお、店舗側がユーザーの要望に応えられない場合、Geminiは「丁寧に」電話を切るとグーグルは説明している。
いずれにしても、この機能は将来的に、ロボットがこうした店舗への電話の大部分を担うようになる可能性を示している。企業側でも、顧客対応にAIを活用する試みが始まっている。例えば、カリフォルニア州で展開するピザチェーン「Pizza My Heart」では、利用者が「Jimmy the Surfer(サーファーのジミー)」というチャットボットにメッセージを送ってピザを注文できるようにした。
利用者はレストランへ電話するようスマートフォンのAI機能に頼み、店側もAIで対応する。近い将来、そうした状況が当たり前になるかもしれない。機械同士が会話をする。ただし、話し合っているのは、ピザの耳をチーズ入りにするかどうかだ。
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)
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