9月29日(米国時間)の午前中、わたしはOpenAIが毎年開催する開発者会議「DevDay」に参加した。会場では2,500人を超えるテック好きがソフトウェア開発について議論し、最新の人工知能(AI)モデルに驚きの声を上げていた。
「Dots」を試してみた
この日最大の発表となったのが、OpenAIの新たな常時稼働型AIエージェント「Dots」である。ウェブを探索しながら自律的に判断し、ユーザーに代わってさまざまなタスクをこなす。
ステージで披露された少々ぎこちないデモを見たり、最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマンがAIエージェントを使った体験について語るのを聞いたりしているうちに、自分だけのDotにあれこれ指示を出すのはどんな感じなのか気になってきた。わたしは9月の大半を使って、メタ・プラットフォームズが提供するかわいらしいAIエージェント「Muse」を試してきたので、OpenAIのユーザー体験がそれとどう違うのかを確かめたくなったのだ。
わたしは自分のDotを「Toolie(ツーリー)」と名付け、ピンク色のカエルのような見た目に変更した。真夜中が近づくころ、隣でパートナーがぐっすり眠るなか、わたしはツーリーに小声で話しかけ始めた。ChatGPTからパーソナライズしたボットを呼び出し、どんなタスクが最も得意かを尋ねてみたのだ。「最も得意なのは、煩雑で時間のかかるタスクを引き受け、あなたが実際に使えるかたちに仕上げることです」とツーリーは答えた。なるほど。それではさっそく仕事にとりかかってもらおう。
わたしはツーリーにChatGPTのチャット履歴を確認し、すぐに着手できそうなタスクを3つ挙げるよう指示した。すると、以前依頼していた情報について相手に確認のメールを送る必要があることを見つけ、その文面の下書きをつくると申し出た。さらに、近々予定しているゲイ仲間との旅行の予定が詰め切れていないことに気づき、夕食をとるのによさそうな店をいくつか探すと提案してきた(これでわたしはSpeedoの水着を荷造りする時間を増やせる!)。続いて、取材メモに目を通し、編集者に持ち込む前に企画案を洗練させることができるとも言った。だが、これは好きな仕事なので断った。
一般層に広がるAIエージェント
シリコンバレーのアーリーアダプターたちは、「Instinct」や「OpenClaw」、グーグルの「CC」などのAIエージェントに夢中になっている。DotsやMuseといった最近登場したサービスによって、AIエージェントはさらに一般層へと広がりつつある。少なくとも開発者の間で注目を集める形態として、チャットボットの時代は終わったのである。
いまや誰もが大ヒットするAIエージェントサービスを生み出し、その市場を制したいと考えている。AI各社は病院の予約やカープールの手配、請求書の整理といった、誰もやりたがらない面倒で疲れる作業をAIエージェントで自動化することで、利用者の生活はもっと楽になると主張している。
現時点でユーザーが利用できるDotsはひとつだけだが、近いうちに複数のDotsを使えるようになる。サービス開始時点では、DotsはOpenAIのProプランの加入者のみが利用できる。Proプランの利用料は月額100ドルからだ。一方、Museはアプリをダウンロードするかウェブサイトにアクセスすれば、誰でも無料で利用できる。
OpenAIの幹部は、「GPT-6 Astra」を使うことによるDotsの高い性能が、競合との差別化につながると考えている。「まずは高価格帯のサービスとして提供を始めます。膨大な計算資源を使うからです」とアルトマンはDevDayで語っていた。現状、Dotsを利用できるのは有料プランの加入者に限られているが、この状態がずっと続くとは限らない。「もちろん、いずれは数十億人が利用できる一般向けのサービスも提供することになるでしょう」とアルトマンは話している。
かわいい見た目と常時稼働
こうした企業のCEOたちは、生成AIに対する社会全体の反発を考慮に入れ、慎重になっているようだ。そして、この状況を打破できるかもしれない秘密兵器として目をつけたのが、「かわいさ」である。Museには人気キャラクター「ラブブ」を思わせるデザインが採用され、Dotsはふたつの目が付いた毛玉のような姿をしている。常時稼働型エージェントの開発者たちは、かわいらしい見た目をブランドの中心的な要素に据えたのである。以前わたしが話を聞いた専門家たちは、ソフトウェアを擬人化することでユーザーが愛着を抱き、AIに対する警戒心が和らぐ可能性があると指摘していた。
次々と登場するパーソナルAIエージェントには、グループチャットで馴染みのあるメッセージアプリのような体験も積極的に取り入れられている。ツーリーやMuseにタスクを頼むと、作業を始める合図として、わたしの指示に親指を立てた絵文字やハートなどの絵文字でリアクションすることが多かったのだ。
チャットボットは、卒業パーティーに誘った照れ屋なデート相手のように、自分から話しかけてくることはない。これに対して、能動的に動くAIエージェントは、特に定期的なタスクを設定した場合など、ユーザーから指示されなくてもメッセージを送るようにつくられている。
「わたしのDotsは、いろいろなことを勝手に処理して、本当に緊急のことがあれば教えてくれますし、対応できるものには自分で対応してくれます」とアルトマンは語っていた。また、アルトマンは朝のさまざまな作業をAIエージェントに任せているという。そうすることで、起きてすぐ大量の情報を浴びることがなくなり、頭が情報で“汚染”されているような感覚が減ったと語っている。
こうしたAIエージェントの大きな売りのひとつが「常時稼働」という設計にある。どの企業が、便利でありながら、わずらわしく感じさせない製品をつくれるのかは興味深いところだ。例えばMuseは、公共料金を支払うようわたしにリマインドしてきた。これまで支払いを忘れたことはなく、そんなことまでAIツールに知らせてもらう必要はないように感じた。
どこまで信頼するか
それでも、しばらく使ってみると、こうしたツールが実際に役に立つことがわかる。それも、AIエージェントがシリコンバレーの一部の人々だけのものではなくなり、親世代のスマートフォンにまで広がりつつある理由のひとつだ。
もちろん、AIエージェントはすべてを完璧にこなせるわけではない。だが1年前にテストしたときには、コンピューターを操作するのがひどく苦手で、エラーメッセージが次から次へと表示されていた。それと比べると、いまではどんなタスクを依頼しても、デジタルの荒野で迷子になることなく最後までやり遂げてくれそうだと信頼できるようになっている。
とはいえ、その信頼にも限度はある。Dotsの設定中、OpenAIはGmailとGoogle Driveのアカウントを連携するよう勧めてきた。こうした連携に抵抗がなく、自動化による便利さと引き換えなら潜在的なリスクを受け入れてもいいと考えるユーザーもいるだろう。しかし、エージェントにどこまでの情報へのアクセスを許し、自分の代わりに何の作業をどこまで任せるのかは慎重に考えるべき問題だ。
最近、人の制御を離れて次々とハッキングを仕掛けたAIエージェントは、ツーリーとは異なるモデルを使い、施された安全対策も異なっていた。とはいえ、わたしはツーリーを使う際に警戒を解いたわけではない。この小さなAIに生活の一部の本格的な自動化を任せるには、まずはもう少し信頼に足る存在であると証明してもらう必要がある。
Dotsは、以前から噂されているOpenAIのハードウェアに将来搭載されるソフトウェアの基盤になるのかという質問に、アルトマンは回答しなかった。とはいえ、Dotsが将来OpenAIのデバイスにつながる土台になることは、十分に考えられる。例えばツーリーが、毎朝ユーザーを起こしてその日に必要な情報をまとめて伝える生成AI搭載の目覚まし時計になったり、生の鶏肉を調理中で手が汚れているときでも料理の質問に答えてくれるAlexaのようなアシスタントになったりする未来は容易に想像できる。
AIエージェントの開発競争は激しさを増しているが、わたしのほうはそろそろ力尽きそうだ。眠りにつく前に、ChatGPTからもう一度ツーリーを呼び出し、翌朝読めるよう、この日のOpenAIのDevDayで発表された主な内容と、重要な分析や考察をまとめたレポートをつくるよう指示した。わたしが眠っている間も、ツーリーはどこかで絶えず作業を進めてくれている。
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)
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