第3回(国内編)と第4回(グローバル編)では、国内外の企業サイトが実際にどのCMSで動いているかを調べました。今回は、そこで取り上げた10種類のCMSを「採用企業の規模・展開範囲」と「提供形態」の2軸で1枚のマトリクスに整理してみました。自社のCMS選定で、候補をどこから探せばよいかの見取り図として使ってください。
CMS分類に使った2つの軸
今回は、第3回・第4回で調べた10種類のCMS、WordPress、Drupal、Movable Type、microCMS、BlueMonkey、ShareWith、HeartCore、Adobe Experience Manager(AEM)、Sitecore、Shopifyを、次の2つの軸で整理しました。
採用企業の規模・展開範囲(横軸)
左ほど「中堅企業・国内中心」、右ほど「大手・グローバル展開」です。第3回・第4回で確認した採用企業の顔ぶれと、国内・海外それぞれで事例が見つかったかどうかをもとに位置を決めました。
提供形態(縦軸)
下が「オープンソース」、上が「商用製品・SaaS」です。オープンソースはライセンス費用がかからない代わりに、構築や保守を自社か制作会社が担います。商用製品やSaaSは、ベンダーが製品やサーバーの面倒を見る代わりに、ライセンス料や月額料金がかかります。
なお、位置は調査で確認できた事例の傾向を示したもので、各CMSが対応できる企業規模の上限・下限を示すものではありません。
商用CMSは、右上の大手・グローバル向けと、左上の国内向けにはっきり分かれました。オープンソースでは、Drupalが大規模なグローバルサイトに寄る一方、WordPressは横軸のほぼ全域に広がっています。
商用×大手・グローバル(右上の象限)
多言語・多サイトを1つの基盤で運用する、エンタープライズ向けの商用CMSが集まる象限です。AEMは国内で花王、パナソニックHD、マツダ、海外でコカ・コーラ、フォード、BMWなどの採用を確認できました。Sitecoreも国内でリコーや富士通、海外でロレアルや米国の保険会社に使われています。
商用・SaaS×国内中心(左上の象限)
国産、または国内市場を主戦場とする商用CMSが集まります。ただし、狙う市場ははっきり分かれています。BlueMonkeyは製造業を中心とした中堅企業のコーポレートサイト、ShareWithは上場企業のIRサイト、Movable Typeは堅牢さを重視する金融やインフラ、microCMSは新しく立ち上げるサイトです。同じ象限でも、競合することは少ない顔ぶれといえます。
オープンソース×グローバル(右下の象限)
Drupalは国内外ともに10件の採用を確認しましたが、国内の顔ぶれは富士フイルム、三菱重工、ネスレ日本など「海外拠点と同じ基盤を使う企業」が中心でした。海外ではテスラ、ファイザー、マースなどが採用しています。ライセンス費用はかからないものの、構築には専門的なスキルが必要で、大規模なグローバルサイトで真価を発揮するCMSです。
オープンソース×全規模(下の象限全体)
WordPressは、中堅企業からグローバル大手まで横軸のほぼ全域に広がります。国内ではイオンやサンリオ、海外ではMetaやMicrosoft、SAPなどで採用を確認しました。
注目したいのは、海外大手での使われ方です。MetaやMicrosoft、Samsung、Salesforceでは、WordPressで動いているのはニュースルームやブログでした。SamsungとSalesforceのメインサイトはAEMです。大手企業にとってWordPressは「メインサイトの基盤」ではなく、「情報発信用のサブサイトの定番」という位置づけになっています。
SaaS×EC専用(枠外)
ShopifyはSaaSで、国内外で10件ずつ採用を確認しましたが、用途はいずれもECサイトです。コーポレートサイト向けのCMSとは比較の土俵が異なるため、マトリクスでは上段に置きつつ、用途特化型として区別しました。
マトリクスから読み取れること
1. 国内向けの商用CMSは、国内市場に深く浸透している
HeartCore、Movable Type、microCMS、BlueMonkey、ShareWithの5つは、いずれも国内の企業で使用されており、海外企業での採用はほぼ見つかりませんでした。米国生まれのMovable Typeも含め、日本語の管理画面や国内のサポート体制、適時開示との連携など、日本企業ならではの要件に応えることで、それぞれの市場を押さえています。
2. グローバル大手のメインサイトは「AEM・Sitecore・Drupal」の3択
海外大手のメインサイトに限ると、名前が挙がるのはほぼAEM、Sitecore、Drupalの3つでした。商用で手厚いサポートとマーケティング機能を取るか、オープンソースで自由度を取るか。グローバル企業のCMS選定は、この3つの比較から始まるケースが多いと考えられます。
3. 1社のなかで、象限をまたいで使い分けている
SamsungはメインサイトがAEM(右上)、ニュースルームがWordPress(下段)でした。第3回で見たとおり、国内でもコーポレートサイトは大型のCMS、メディアは軽量なCMS、ECはShopifyという使い分けが一般的です。マトリクスは「1社に1つ」を選ぶ地図ではなく、「サイトごとに」選ぶ地図として読むのが実態に近いでしょう。
現在のCMSをリプレイスするなら、どのCMSか
マトリクスを「リプレイスの地図」として読むと、現在のCMSごとに次の候補と目的が見えてきます。
| 現在のCMS | リプレイス先の候補 | リプレイスで想定される目的 |
|---|---|---|
| WordPress | microCMSなどのヘッドレスCMS/HeartCore、BlueMonkey/Drupal、AEM、Sitecore | プラグイン由来の脆弱性対策と保守負担の軽減、表示速度の改善、ベンダーサポートの確保、多言語・多サイトの統合 |
| Movable Type | WordPress/microCMS/HeartCore | 開発者・制作会社を確保しやすい環境への移行、動的な機能の追加、承認ワークフローの強化 |
| BlueMonkey | WordPress/HeartCore/microCMS | デザインや機能の自由度の向上、事業拡大に伴うサイト規模・サイト数の増加への対応 |
| ShareWith | HeartCore、AEMなどでコーポレートサイトと統合 | コーポレートサイトとIRサイトの一元管理 |
| microCMS | Contentful、Contentstackなど海外のヘッドレスCMS/Sitecore(SitecoreAI) | 海外拠点への展開と多言語対応、グローバルでのコンテンツ共通化 |
| HeartCore | AEM/Sitecore/microCMS | 海外拠点を含めた統合基盤づくり、パーソナライズなどマーケティング機能の強化、ヘッドレス化 |
| Sitecore | SitecoreAI(クラウド版)/AEM | オンプレミス運用からSaaSへの移行、ヘッドレス化による表示側の自由度向上、バージョンアップ負担の軽減 |
| Adobe Experience Manager | AEMのクラウド版・Edge Delivery Services/Sitecore/Drupal | 表示速度の改善、運用コストやライセンス費の見直し |
| Drupal | 新しいバージョンのDrupal/ヘッドレスDrupal(Next.jsなどと組み合わせ)/AEM | 旧バージョンのサポート終了への対応、表示側のモダン化、マーケティング機能の拡充 |
| Shopify | Shopify Plus/ヘッドレス構成(Shopify+ヘッドレスCMS)/Salesforce Commerce Cloud | 事業規模の拡大への対応、ECとコンテンツの融合、表示速度と表現力の向上 |
表の候補を、縦軸に現在のCMS、横軸にリプレイス先を並べて整理すると次のようになります。
リプレイス先として名前が挙がるのは、AEMが5つのCMSからと最も多く、HeartCore、microCMS、Sitecoreがそれぞれ4つで続きます。反対に、ShareWithとShopifyは他のCMSからの乗り換え先にはなりにくく、用途特化型らしい位置づけが表れています(候補と目的は、第3回・第4回の調査結果とマトリクス上の位置から想定したもので、個別の企業の事例ではありません)。
第3回・第4回の調査でも、ヘッドレス化や、静的CMSからの乗り換えといった動きが見られました。CMS選定では、マトリクスはあくまで参考として捉え、自社のリプレイス目的を明確にすることが近道です。
なお、本稿の分類は2026年10月時点で、主にトップページのHTMLとベンダーの公式事例から確認した採用企業をもとにしています。CMSが変わっていたり、ページによって異なったりする場合もある点にご注意ください。