Figmaの年次カンファレンス「Config 2026」の様子を、全4回にわたってお届けするレポート連載。最終回となる第4回では、開幕前日にサンフランシスコのFigma本社で開催された日本企業向け特別イベントの様子を取材。
AIの進化によって職種間の境界が曖昧になるなか、これからのクリエイターに求められる「5つのスキル」と新たな役割「FDE」について解説する。また、日本からの参加者たちによる「Config 2026」の振り返りも紹介する。
AIでデザインが民主化された今、問い直される「職種」のアイデンティティ
Config 2026の開幕前日である6月23日、サンフランシスコのFigma本社にて日本企業向けの特別イベントが開催された。シリコンバレーと日本をつなぐVC「ジオデシック・キャピタル」のジャパンカントリーマネジャー・尾辻マーカス氏から、非常に示唆深い話題が提供された。
一昔前のクリエイターは「AIが進化すれば自分の仕事がなくなるのでは」と恐れていた。しかし今は、プロダクトマネジャー、デザイナー、エンジニアの3者が「自分がAIを駆使すれば、あとの2職種はもう必要ない」と言い合っているような状態だ(尾辻氏)
たしかに、明確な数字にも表れている。Figmaが10カ国約8,500人の開発者、プロダクトマネジャー、エンジニア、デザイナーを対象にAI活用の実態を調査した最新のレポートによると、このような傾向が見られた。
専門職間の壁の崩壊:
開発者のデザインへの参加が前年比44%から60%へ、デザイナーのコーディングへの参加が前年比21%から41%へと急増。ハンドオフモデルの終焉:
従来の「デザイン完了後にエンジニアへ渡す」という直線的なモデルは崩壊し、55%のチームが並行作業や反復的なプロセスを採用。
さらに成功している組織は、AI導入だけでなく、トレーニングやガイドライン策定といった組織的な支援を組み合わせているという。企業によるAIトレーニングへの投資は2年間で28%から54%へ倍増している。
このように現場の働き方が激変するなか、AIのポテンシャルを真に引き出せるかどうかは「組織のあり方」にかかっている。AI時代において組織の競争優位性を左右するのは、次の5つのスキルだ。
一貫性の保持:
チームメンバーがAI生成をする際の一貫性を保持するための仕組み。また、全体像を把握し、方向性のズレを早期に捉え、修正することができる人材。対立の調整:
チーム間の意見の相違を、交渉で合意にもっていくスキル。戦略的トレードオフ:
企業ニーズとユーザーニーズの間で、優先順位を判断するスキル。時には「最高のもの」より、「正しいもの」を提供する必要が生じるため。キュレーション:
AIが生成した膨大な選択肢から、何を残し、何を捨てるかを素早く決定するスキル。つなぐ翻訳者:
専門職と専門職の間を行き来し、時には翻訳者となって全体をつなぐ役割の人材。
さらに尾辻氏は、顧客の現場に入り込み設計・導入・運用を支援する「FDE(Forward Deployed Engineer)」の重要性を指摘する。
AnthropicやSalesforceがFDEの大規模採用を始めており、既存のデザイナーやプロダクトマネジャー、エンジニアがこの職種へシフトする可能性もある(尾辻氏)
一方で、今もこれからも変わらず重要なのは、プロダクトマネジメントの明確さだ。ユーザーを主人公に見立て、どんな人物が、なぜ訪問し、どこを巡って最終的にハッピーエンディングを迎えるのかを、“脚本を書く”ように設計すること。そして、その体験を形にする「差別化要因としてのデザイン」の重要性も指摘した。
新機能、どう使う? 日本からの参加者の声
では、実際にクリエイターは今回のFigmaの発表をどう受け止めているのか。日本から現地参加した参加者に話を聞いた。

グロービスのデジタルプロダクトの開発チームとしてFigmaを活用しています。今回の新機能で、よりコーディングとの接続が強くなったのが印象的でした。プログラミング言語には忌避感を持つデザイナーでも、Figmaの中でコーディングまで完了でき、GitHubにも上げられるので、これまでの問題定義→デザイン→実装→リリースという仕事の進め方が大きく変わりますよね。プロトタイプファーストで、とにかく作ってみて、ぐるぐる回していく。その速度をいかに高めていくかというフェーズに来ていると感じました(末永氏)
メルカリでは2017年頃からFigmaを使い始めました。今回の新機能によって、エンジニア側はローカルで、デザイナーはFigmaでと、どちらでもやりやすい方法で同じものを構築できるようになったと感じます。デザイナーなら多分、全フローを一気に見たいので、バードアイビュー(鳥瞰図)は喜ぶんじゃないかな。また、「モーション」にも注目しています。たとえばメルカリに初出品した時にお祝いのアニメーションが弾けるとか、楽しくてエモーショナルなユーザー体験の構築に使ってみたいですね(Aki氏)
4回にわたって「Config 2026」をレポートしてきた。今年のConfigは125人が登壇し、1万人が現地参加。サンフランシスコの市長が来場してXで動画配信までしたほど注目度が高かった。実務的なHow Toのセッションだけでなく、「音楽×デザイン」「数学×デザイン」「文学×デザイン」「宇宙×デザイン」といった、アーティスティックな発想を刺激するセッションが例年以上に充実していた印象だ。
なお、今後のFigmaの予定として、次の2つの新機能がクローズドβ版でリリースされるという:
- チームでのブレインストーミングに使えるホワイトボードツール「FigJam agent」
- プレゼン資料作成などに使える「スライドagent」
また、毎年世界のどこか1か所を選んで行われるConfigのダイジェスト版は、インドのバンガロールで10月15日に開催されることも発表された。