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筆者はAIの専門家でも、デジタル技術に詳しい人間でもない。40年以上、大学で教育・研究、研究機関の運営、科学技術政策に携わってきた研究者である。その筆者の仕事の仕方がAIの活用によって突然、大きく変わった。
きっかけは、9月中旬にスマートフォンの音声入力と生成AIだった。文章を頭の中で整えてから入力する必要がない。人に話すように、時には自分自身に話しかけるように、考えの途中をそのまま口にする。AIが文脈を読み取り、整理して返してくれる。会議の合間の10分、移動中やベッドの上などこれまで仕事にならなかった時間が知的生産の時間になった。文章を書く仕事なら、ほとんどスマホだけで進むようになった。
しかし、さらに大きな変化は、AIが単なる文章作成の道具ではなく「思考の相手」になったことである。AIに「それは違う」と言い、議論を続ける。逆に、自分の考えの方が間違っていたと気づかされることもある。頭の中の自問自答が外に取り出されたような感覚だ。
AIの専門家にとっては、すでに「常識」のような話かもしれないが、筆者にとっては衝撃だった。これは単なるAIによる効率化なのか。それとも、知的労働そのものの変化なのか。70歳を過ぎて突然経験した自分自身の変化を手がかりに、生成AIがこれからの仕事、生産性、そして「考えること」をどう変えるのかについて考えてみたい。
AIの活用で生産効率が飛躍的に向上した
筆者は長く大学で教育・研究をし、その後は研究機関の運営や科学技術政策にも携わってきた。文章を書くこと、資料を読み、考えを整理し、政策提言や報告書にまとめることは、何十年も続けてきた日常的な仕事である。そのやり方が、71歳にして突然変わった。
9月下旬、政策提言、政府の科学技術顧問としての4年間を振り返る報告書、新しい組織の構想、さらにAIと知的生産についての複数の論考を、ほぼ同時並行で書いた。
もちろんAIに「書いて」と頼んで出来上がったわけではない。材料も問題意識も判断も筆者自身のものである。それでも、これまでなら到底この速度では進まなかった。体感的には、知的生産の速度が一気に何十倍、時には100倍になったようにさえ感じる。
何が起きたのか。きっかけは、スマートフォンへの音声入力だった。使用している機種は、アップルの「iPhone Air」である。利用しているAIツールは、おもにオープンAIの「チャットGPT」。それ以外に、アンソロピックの「クロード」やグーグルの「ジェミニ」も併用している。
音声入力そのものは1年ほど前から使っていた。しかし、便利ではあるが、時々使う程度だった。転機は9月に入ってからである。話した言葉の認識精度が上がり、多少の誤変換があっても、生成AIが前後の文脈から「筆者が何を言おうとしているか」をかなり正確に理解してくれることに気づいたのだ。
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