英国ノーザンブリア大学のLea Ferellec氏、エディンバラ大学のCyrielle Opitom氏とColin Snodgrass氏からなる研究チームは、観測史上3例目の恒星間天体「3I/ATLAS(アトラス彗星)」は窒素が豊富であり、極めて低温の環境で誕生したとする研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「王立天文学会月報」に掲載されています。
3I/ATLASの尾で5種類のイオンを同時に検出
2025年7月に発見された3I/ATLASは、2017年に見つかった「1I/’Oumuamua(オウムアムア)」、2019年に見つかった「2I/Borisov(ボリソフ彗星)」に続く、観測史上3番目の恒星間天体です。2025年10月末に太陽へ最接近した後、現在は太陽系の外へ向かって遠ざかりつつあります。
研究チームはカナリア諸島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にあるウィリアム・ハーシェル望遠鏡(WHT)を使用して、2025年11月30日と12月2日の2回にわたり、3I/ATLASの面分光観測を実施しました。面分光とは、天体の撮像データ(2次元画像)とスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)を同時に取得できる観測手法のことです。

観測の結果、研究チームは3I/ATLASの尾に含まれていた5種類のイオン(※)を同時に検出しました。王立天文学会によると、この成果は恒星間天体としては初めてで、太陽系の彗星全般と比べてもまれなことだといいます。
※…窒素分子イオン(N2+)、一酸化炭素イオン(CO+)、二酸化炭素イオン(CO2+)、水分子イオン(H2O+)、メチリジンイオン(CH+)。
窒素の多さが物語る形成時の極低温環境
研究チームは検出されたイオンのうち、窒素分子イオンと一酸化炭素イオンに着目。3I/ATLASの本体を構成する氷に含まれていた窒素分子と一酸化炭素の比率を推定する手がかりとして、これらのイオンを利用しました。
分析の結果、3I/ATLASにおける窒素分子の一酸化炭素に対する比率は、太陽系の一般的な彗星と比べて明確に大きな値であることが推定されました。窒素分子と一酸化炭素の比率は氷が形成された時の温度に大きく左右され、値が大きいほど低温の環境で形成されたことを意味するといいます。
この結果を受けて研究チームは、3I/ATLASはマイナス240℃を下回るような極低温の環境で形成されたと考えています。2026年4月にはアルマ望遠鏡(ALMA)による3I/ATLASの半重水の観測データをもとに同様の低温環境で形成された可能性を指摘する研究成果が発表されていますが、今回の研究でも一致する結果が得られたことになります。
Ferellec氏は「3I/ATLASは、私たちの太陽系とは全く異なる場所で形成された物質を研究できる、めったにない機会を与えてくれます。窒素がこれほど豊富だとわかったことで、3I/ATLASは自身の主星から遠く離れた、極めて低温の環境で形成されたと考えられます」と述べています。
太陽系以外の場所ではどのようにして惑星や小天体が形成されるのかを理解する手がかりとして、今後も恒星間天体は注目され続けることになりそうです。

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- The Royal Astronomical Society - Secrets of interstellar comet 3I/Atlas revealed
- Isaac Newton Group of Telescopes - WEAVE Reveals Secrets of Interstellar Comet 3I/Atlas
- Ferellec, Opitom and Snodgrass - Ion abundances in the plasma tail of 3I/ATLAS show that it is N2-rich (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)