
普通のメガネのように見えるカメラ付きスマートグラスをめぐり、欧州でプライバシー侵害への懸念が強まっています。
オランダの消費者団体Consumentenbond、ネット被害対策団体Offlimits、市民団体The Firewallの3団体は、Metaなどを相手取りアムステルダム地方裁判所に略式手続き(kort geding)を申し立てました。
周囲に気付かれず撮影できる仕様がプライバシー法に違反するとして、販売停止や機能改修を求めています。
審理は11月26日に開かれる予定。The Firewallによると、判決は審理から2週間以内に出る見込みです。
OfflimitsとThe Firewallの2団体は、Metaとレイバンの親会社EssilorLuxotticaを相手取り、ひそかに撮影できる状態が続く限りグラスの販売をやめるよう要求。あわせて、販売済みのグラスについても、撮影される側の明確な同意がなければ録画できない機能への改修を求めました。
これに先立ち、両団体は9月29日に店頭から2週間以内で撤去するよう文書で求めていました。しかしMeta側は自主的に撤去する考えはないと回答したとのこと。
一方、ConsumentenbondはMetaに対し、プライバシー法を満たすよう設計や初期設定を見直すことや、AI向けの違法なデータ処理をやめるよう要求。3団体は手続きを連携させており、裁判所に併合審理を求めています。
撮影時に点灯する前面のLEDランプをめぐっても、実効性が争われています。Metaはランプを塞ぐなどの細工を検知するとカメラが動かなくなる仕様だと主張。
しかしConsumentenbondの検証では、普通のシールなら撮影は止まるものの、正面は塞ぎつつ側面から光を通す市販の特殊なシールを貼ると撮影できたとのこと。プライバシー関連のアップデート後も変わらず、9月2日に最新のソフトウェア(バージョン127)で確かめたといいます。
また同団体は、日差しの下や離れた場所からはランプ自体が見えにくい点も指摘しています。
さらにConsumentenbondは、撮影された映像に政治的な信条や宗教、健康状態などの機微な個人情報が含まれうることや、MetaがAI学習へ利用する可能性を問題視しています。
一方で、目の不自由な人や視力の弱い人にはAIグラスが役立つ場合があるとし、販売禁止とする場合でも医療上の必要がある人は例外として扱うよう求めました。
オランダ国内ではすでに、眼鏡チェーンのHans Andersや通販大手のWehkampがMetaのグラスの販売を取りやめました。また下院でも、こうしたグラスの着用禁止を政府に求める動議が可決。ノルウェー政府も、公共の場の一部で着用を一時的に禁止する方針を示しています。
MetaのAIグラスは日本でも販売されているだけに、他人事ではありません。スマホなら構えた時点で撮られていると気付きやすいですが、メガネだと気付きにくいとも言えます。判決が販売停止まで踏み込むのか、それとも設計の見直しで決着するのか注目です。