
Bluetooth SIGは11月4日、「Bluetooth High Data Throughput」(HDT)を採用したと発表しました。これは、新たに策定された「Bluetooth Core 7.0」のオプション機能に位置づけられる新技術です。
これまでワイヤレスイヤホンでのロスレスやハイレゾの伝送には、ソニーの「LDAC」やクアルコムの「aptX Lossless」といったメーカー独自の技術が主に使われてきました。HDTの登場により、今後は標準規格の枠組みで高音質伝送が実現する見込みです。
HDTは新しい物理層(PHY)を追加し、Bluetooth LEの最大ビットレートを7.5Mbpsまで引き上げる仕様。従来のLE 2M PHY(最大2Mbps)と比べてほぼ4倍に達します。
Bluetooth SIGはHDTの利点として、データ転送の高速化だけでなく、通信容量の拡大や省電力、信頼性の向上を挙げています。一度に多くのデータを短時間で送信できるため、無線通信の稼働時間を減らし、低消費電力の状態を長く維持できるとのこと。
そして最初の主な用途には、標準化された高品質なワイヤレス音声を想定。同団体は2027年の登場を見込んでおり、ロスレスやハイレゾ音声を伝送できるほか、マルチチャンネルのサラウンドや空間オーディオにも対応する計画です。
さらに、XRをはじめとする空間コンピューティングやAI機器、業務・産業用途への展開も見込んでいます。
現在のロスレスやハイレゾ伝送でLDACやaptX Losslessなどの独自技術が使われている点を挙げ、HDTが標準的な土台になると米Android Authorityは指摘。一方、HDTの利用には新しいハードウェアが必要で、今ある機器が自動的に対応するわけではない点にも触れています。
同誌によると、クアルコムの通信チップ「FastConnect 8800」は、すでにHDTへの対応をうたっています。しかし、最初に対応するスマートフォンやイヤホンがどれになるのかは、現時点で明らかになっていません。
iPhoneはLDACにもaptXにも対応しておらず、ロスレスのワイヤレス再生ではAndroidを選ぶオーディオ愛好家もいます。
ただBluetooth SIGの取締役会にはAppleでBluetooth規格を担当する技術者も加わっており、今後HDTが標準規格として普及してiPhoneやAirPodsが対応すれば、「iPhoneはLDACが使えないから」とイヤホン・ヘッドフォン選びを諦める必要もなくなるでしょう。
独自技術の陣取り合戦が標準規格で決着するかもしれない展開は大歓迎ですね。あとは対応機器がいつ、どれだけ揃うか、楽しみに待ちたいところです。