
2026年9月、木原稔官房長官は記者会見において、「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」などが関与する特殊詐欺被害について、「1日あたり約10億円の被害が発生しており、異常事態とも言える状況だ」と強い危機感を示した。政府はこの事態を「治安対策上の最重要課題」と位置づけ、被害撲滅に向けた対策を一層強化していく方針だという。
真由さん(63歳)は定年直前に、SNSで知り合った男性に300万円を振り込んでしまったという。「定年は、会社という大きな船から放り出されることと同じ。私のようにメンタルがおかしくなる人もいるだろうから、支え合いのネットワークは作っておくべき」と言う。
「庶務の女の子」から「営業補佐」へ
真由さんは、60歳で定年退職してから3年になる。
「退職してみると、本当に会社というのはいいところだった。満員電車が辛いとか、仕事がきつい、社食がまずい、給料が上がらないなど文句ばっかり言っていたけれど、追い出されてみると、あんなにいいところはなかったと思います。なんだか妻と熟年離婚して初めてそのありがたみをわかる夫みたいな感じ」
真由さんが20歳、1983(昭和58)年に短大卒業後入社したのは、ある建設会社だ。
「父のコネで、お嫁さん要員として入社したんです。母親から『あの会社の男を捕まえたら一生安泰。結婚しなさいね』と言われていました。母は娘の私から見ても幸せな人生でした。優しい父と結婚し、子供を2人産んで、独身時代のお金とへそくりで投資し、自分の資産を持ちながら、趣味や旅行を楽しむという理想の人生を過ごしました」
当時は母の人生をトレースしようと思っていたという。
「私の人生を大きく変えたのが、1983年のあるテーマパークの開業。私が勤務していた会社が工事の一部に関わっており、入社半年くらいのときに上司が無料チケットをくれたんです。当時、園内は身動きができないくらい人だらけでした。すし詰め状態なのに、みんな笑顔で楽しそうにしている。内部に入ると、『これはいったいどうやって図面を引いて建てたの?』と思う建物ばかり。まさに夢の国でした。『これだけ多くの人の幸せに関わる、すごい会社に勤めているんだ』と強く思ったのです」
新卒時、配属されたのは営業部で、任された仕事は庶務だった。
「当時の短大卒女性ができる仕事といえば、お茶出し、電話取り次ぎ、郵便物の仕分け・集荷、清掃、文房具や備品の管理など。テーマパークを訪れるまでは、適当に仕事をして定時で帰っていましたが、私の仕事の先にあのテーマパークのようなすごい施設があると思うようになってから、仕事への姿勢ががらりと変わりました。
会社は個人のそういう変化をしっかり見てくれているんですよね。1年間雑用をしたところで上席から『営業サポートの仕事をしないか?』と言われ、2つ返事で受けました」
仕事は見積書作成の手伝い、建設図面や書類のコピー(大型複写機を使用)など多岐に渡った。
「ウチの業界の見積もりは、ものすごく特殊で項目も多いんです。当時はパソコンがなかったので、電卓のGT(グランドトータル/総計機能)やM+やM-などのメモリー機能を使いこなし、間違いなく計算するために頑張っていました。上から計算するだけでなく下から逆に足し戻すなど自分なりに工夫していたら、様々な仕事を任せてもらえるようになったのです。独自の単位を覚えたり、仕事の流れを把握したり、一生懸命でしたね」
【男は総じて感謝がないから、結婚はしない……次のページに続きます】