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元テレビ東京社員、桜美林大学芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修教授
アジア1位でも、視聴者の97%は日本国内
日本のテレビドラマは衰退したと言われて久しい。
若者はテレビを見ない。視聴率は下がり続ける。NetflixやYouTubeに視聴者を奪われた。CM枠が売れず、広告費は配信に抜かれた。そんな論調は、いまや業界のみならず社会の常識になっている。
だが、本当にそうなのだろうか。
私は元ドラマプロデューサーとして、また現在は大学で映像制作やメディアについて教える立場として、この答えに違和感を抱いてきた。そして、その思いを改めて強くしたのが、TBSドラマ「VIVANT」シーズン2である。
この作品は単なるヒットドラマではない。現在の日本のテレビドラマ産業が抱える強みと弱み、その両方を極めて鮮明に映し出した作品だ。
アジアの動画配信市場を調査するMedia Partners Asia(MPA)傘下のAMPDによれば、「VIVANT」シーズン2は2026年8月、中国とインドを除くアジア太平洋地域で最も視聴されたタイトルとなった。推計ユニーク視聴者数は1563万人。そのうち約1513万人が日本国内の視聴者であり、実に97%を占めていた。
この数字をどう読むべきだろうか。
私はこれを「海外で失敗した」とは考えない。むしろ逆である。
「VIVANT」は国内で成功しすぎた
「VIVANT」は失敗したのではない。圧倒的に成功した。いや、成功し過ぎたのである。ただし、その成功はグローバルヒットではなかった。この現象を私は「超巨大ローカルヒット」と呼びたい。
長年テレビドラマの企画開発やプロデュースに携わってきた人間として、今回驚いたのは海外比率3%という数字そのものではない。むしろ、日本国内だけでここまで巨大な成功を実現できたことだ。
私が現場にいた頃、ドラマの評価軸は視聴率だった。放送翌朝、その数字に一喜一憂したものである。
ところが今は違う。
地上波の視聴率だけで作品の価値は測れない。TVerがあり、YouTubeがあり、SNSがある。放送終了後も作品は視聴され、語られ、消費され続ける。「VIVANT」は、まさにそのテレビドラマのIP(知的財産)化を象徴する作品だった。単発の番組として終わるのではなく、続編や配信、関連ビジネスへと展開できる資産として育てることができたからである。
私はこの超巨大ローカルヒットという現象の裏に、日本ドラマが世界市場で苦戦する理由と、それでも国内で圧倒的な強さを維持できる理由の二つが隠されていると考えている。
