体の異変を早期に察知するために受ける健康診断。「A判定」に胸をなで下ろし、あるいは想定外の数値に意気消沈する――。
検査結果に一喜一憂するのは世の常だ。
ただ、「健診の結果に誤りが含まれていたら」と想像する人は、ほとんどいないだろう。
可能性は極めてまれではある。
ただ、ゼロではない。
健診結果の誤通知によって人生の歯車が狂わされることは誰にでも起こりうる。
大阪府高槻市に住む女性(60)がそうだった。
<主な内容>
・1年で様変わりした判定
・判定した医師と対面
・救済求めて法廷闘争
・味方のはずの会社は……
女性は工場で事務を担当する会社員。社外では、社会人のソフトボールチームに所属し、全国大会に出場した経験もある。
夫(60)は若い頃からの夢だった牧師を目指していて、いずれは夫婦で新たな土地に移り住むことも思い描いていた。
公私に充実した日々を送っていた。10年前までは。
自覚ありも「異常なし」
女性が異変を感じたのは50歳を目前にした頃だった。
階段の上り下りで疲れた。胸が痛み、動悸(どうき)がした。
「ひょっとして体のどこかが悪いのではないか」。悪い予感が頭をよぎった。
企業の従業員は労働安全衛生法に基づき、年に1回、健診を受けることになっている。
2016年秋だった。体の不調がピークに達していた中、検査のタイミングがやってきた。
女性は勤務先の健保組合が契約する健診センターに向かった。
問診票には自覚症状を細かく書き込んだ。
戻ってきた健診の結果によれば、女性の体は健康そのものだった。
検査項目のほとんどが異常なしを示す「A判定」。念のため近所の内科も受診したが異常は見つからず「疲れていたんだ」と考えるようにした。
それから1年後、同じ健診センターで再び検査を受けた。
驚くことに検査項目のうち、胸部X線がA判定から「D2判定(要精密検査)」へと様変わりしていた。
突き動かした「疑問」
大学病院で診てもらい、診断が付いた。
病名は肺がん。
進行度は5段階で上から2番目の「ステージ3」で、リンパ節に転移していると宣告された。
女性の日常は一変した。
放射線治療を受け、抗がん剤も使った。合併症で関節痛を発症し、全身が痛んだ。
闘病生活を送る中、女性の脳裏には、ある疑問が浮かんでいた。
がんはこれほど速く進行するものなのだろうか、と。
16年の健診結果を見返すと、所見欄には「右肺に影がある」ことを示す記載があった。
疑問はますます膨らんだ。
女性は健診結果の通知を手に、健診を受けた大阪府高槻市の健診センターを訪ねた。
対応した医師は「確かにおかしい。センター内で共有します」と女性の疑問に同調してくれた。
10分ほど待たされた後、X線画像を専門的立場で読み解く読影医が、事務担当者らとともに診察室に入ってきた。
女性が16年秋に受けた健診で胸部X線をA判定と診断したとされる、その人だ。
「届くはずは………
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