- 2026.10.29
- 大谷達也
英国のレーシングカーメーカー、ラディカル・モータースポーツが手がける「SR1 XXR」は、車重わずか510kgのサーキット走行専用モデルです。モータージャーナリストの大谷達也氏が、英国のドニントンパーク・サーキットで試乗しました。果たして、どのような走りを見せたのでしょうか。
わずか510kgの超軽量ボディ! サーキット専用車の実力とは
ラディカル・モータースポーツが作る「SR1 XXR」(以下、SR1と表記)にイギリスのドニントンパーク・サーキットで試乗しました。
1997年にイギリスで設立されたラディカルは、これまでに3000台を超えるスポーツレーシングカーを生産してきました。間もなく創業30年になるのに総生産台数がたったの3000台と聞くと、非常に小規模というか、取るに足らない存在のように思えますが、ラディカルは基本的にサーキット走行専用車だけを作ってきた自動車メーカーです。

そんな彼らは、レーシングカーの生産台数においてポルシェに次ぐ世界第2位の規模であると主張します。私はイタリアのダラーラも同じくらいの規模であると理解していますが、いずれにしても、ラディカルが世界最大級のサーキット走行専用車メーカーであることは間違いないでしょう。
なぜ、ラディカルはこれほどの長きにわたってサーキット走行専用車を作り続けてこられたのでしょうか?
その最大の理由は、競技用のレーシングカーだけでなく、アマチュアにも扱いやすいレーシングスポーツを主に手がけている点にあると思います。
公道を走れないサーキット走行専用車と聞くと、極めて高価で一般の方とは無関係な存在と思われるかもしれません。
ただし、筆者(大谷達也)がイギリスで試乗したエントリーモデルとなるSR1の価格(消費税込)は1455万2000円で、ポルシェ「911カレラ」の1884万円を大きく下回っています。「でも、ラディカルは公道を走れないんでしょ?」と突っ込まれそうですが、逆にスポーツカー・ベースのサーキット専用車は軒並み2000万円以上。しかも、車重が510kgと軽いSR1はタイヤやブレーキへの負担が軽く、ランニングコストは段違いに安上がりとされます。
それでも走りは本格的。前述のとおり、私はドニントンパークでSR1に試乗しましたが、これまでさまざまなスーパーカーに乗った経験がある私にもタイヤのグリップ限界を引き出すには至りませんでした。
たしかに、初めて走るサーキットで、しかも専有走行ではないスポーツ走行枠で、走行時間も15分ほどと限られた条件ではありましたが、SR1のコーナリング性能が一般的なロードカーとは比べものにならないくらい高いことだけは間違いありません。
しかも、510kgという超軽量ボディのため、クルマの反応がダイレクトで、レスポンスは俊敏。それにもかかわらず安定感が高く、スピンしそうになる気配がまるで感じられないのは、SR1の基本的な設計が優れていると同時に、一般的なロードカーとはケタ違いのダウンフォースを発生させていることに秘密がありそうです。
私はラディカルの工場を訪れてその生産現場を取材してきましたが、車体の骨格はスチールパイプを複雑に組み合わせたスペースフレームで、見るからに強固そうでした。また、前後のダブルウィッシュボーン式サスペンションはスペース効率よりも「タイヤのグリップをいかに引き出すか」に注力したことがひと目でわかるデザイン。そしてリアの巨大なウィングとフロントの鋭く突き出たエアスプリッターが巨大なダウンフォースを生み出すであろうことは容易に想像がつきました。
ただし、SR1に乗っていて強く印象に残ったのは、速度域などにかかわらず、前後のグリップバランスが常に一定で安定しているように思えたことでした。タイヤのグリップ限界に到達していなかったのだからそれも当然かもしれませんが、身体がシートに強く押しつけられるほどの横Gを発生させても、ハンドリング特性が一切変化しないことは驚きであると同時に、クルマに強い信頼感を抱く源ともなりました。
とっさの操作も受け止める! SR1の驚くべき「懐の深さ」
クルマに対する信頼感という面では、走行中にこんなことがありました。
そのとき、後方から速いクルマが迫ってきたため、私はその車両に進路を譲りました。しかし、その車両のゆくえを確認していたせいで、次のコーナーへのターンインが一瞬遅れ、理想的なラインよりも急な角度でコーナリングしなければいけなくなったのです。

やむなく、私はステアリングをさらに切り込みましたが、SR1は私の操作をさらりと受け入れ、ノーズの向きをしっかりと切り替えると安定したスタンスを保ったまま次のコーナーに進入していったのです。
多少荒い操作をしたところで、そのほぼすべてをしっかり受けとめる懐の深さがある。それが、私のSR1に対する印象でした。
また、軽量で重心が極端に低いように感じられたことも、クルマへの信頼感を高める要因となりました。というのも、軽量で重心が低いクルマは、たとえタイヤがスライドを始めても修正が容易で、スピンに陥らずに済むことが多いからです。
SR1に搭載されるエンジンは、スズキの大型バイク「ハヤブサ」のエンジンをベースに、ラディカルが独自に開発した1340cc直列4気筒16バルブエンジンで、最高出力は190馬力。駆動方式は後輪駆動(MR)です。モーターサイクル用と聞くと中低速のトルクが細いのではないかと心配になりますが、ここでも車重の軽さが利いて、どんな回転数でもグイグイと加速していく柔軟性を示しました。
ギアボックスはモーターサイクル用のシーケンシャル6速をそのまま用いますが、その変速は圧縮空気を用いたパドルシフトによるもので、プシュッ、プシュッという音とともに瞬時に完了。また、クラッチ操作が必要になるのは発進時だけで、クルマが動き出してからはクラッチペダルを踏む必要がないというのも、ホンモノのレーシングカーさながらです。
スーパースポーツカーがどんどん高性能化するなか、一般公道上でそのパフォーマンスを試せないことにストレスを感じているオーナーが増えていると聞きます。そうしたオーナーの一部は自慢のスーパースポーツカーでサーキットを走ることもあるようですが、タイヤやブレーキが高価で、これらが大きなコスト負担につながっているそうです。
しかし、ラディカルであればスーパースポーツカー並みか、場合によってはそれを上回る性能を、より手軽に引き出すことができそうです。
しかも、2027年からはSR1の兄貴分にあたる「SR3 XXR」を用いたワンメイクレースが日本でも開催される予定です。もちろん、ラディカルも決して安いわけではありませんが、これまでサーキットでスーパースポーツカーを走らせてきたファンにとっては、新たな選択肢が登場したといえそうです。
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