オルタネイトヒストリー
映画『ダークナイト』のジョーカー役は、レオナルド・ディカプリオとホアキン・フェニックスの双方に打診されていたものの、最終的に両者とも辞退していたことが同作のキャスティングディレクターによって明かされた。
クリストファー・ノーラン監督と長年タッグを組んできたキャスティングディレクターのジョン・パプシデラは、ナッシュビル映画祭での発言(TV IntelligentsiaおよびBatman News経由)のなかで、『ダークナイト』のジョーカー役についてヒース・レジャーが第一候補ではなかったことを明かした。同氏によれば、脚本はまずレオナルド・ディカプリオのもとへ送られたものの、返事すら得られなかったという。続いてオファーを受けたのが、のちに2019年の映画『ジョーカー』で同役を演じアカデミー賞を受賞することになるホアキン・フェニックスだった。当時フェニックスはノーランとパプシデラに対し、大作映画への出演には関心がないと告げ、役を断ったという。
こうして最終的に役を射止めたのがヒース・レジャーであり、その後の歴史は誰もが知るとおりだ。ディカプリオはノーランの次回作『インセプション』で主演を務めることになり、昨年には『ダークナイト』がお気に入りのノーラン作品であるとも語っている。なお、第3作となるバットマン映画について、ワーナー・ブラザースは『タイタニック』のスターであるディカプリオをリドラー役に起用するよう、ノーランと制作陣に圧力をかけていたと報じられている。だが制作陣はこの要求に応じなかった。バットマン作品ではまず物語を構築し、そのうえでヴィランを決定していくのが彼らの通例だったからだ。結果として、肉体的に圧倒される老境のバットマンを描く物語において、ベインのほうがはるかに理にかなったヴィランとなった。
また前述のとおり、フェニックスは後にまったく異なるアプローチでジョーカーを演じることになった。彼が演じた2本の映画におけるジョーカーは、はるかに計算高さが薄い。混沌や革命、無秩序の象徴へと図らずも祭り上げられていく人物であり、本人の手に余る状況へと巻き込まれていく姿が描かれている。
いまやディカプリオが演じるジョーカーを想像するのは難しいかもしれないが、レジャーがキャスティングされた当時の世間の見方を振り返ってみる価値はある。ディカプリオと同様、当時のレジャーはハリウッドにおいて「甘いマスクの美男子」と見なされており、そのような悪役への起用は奇妙な選択だと受け止められていたのだ。当時のフェニックスも、そうした俳優の枠組みからかけ離れていたわけではない。ノーランとパプシデラは、既存のパブリックイメージを意図的に覆し、俳優自身のまだ見ぬ一面を引き出せる人物を探そうとしていたのだろう。