「ミニマリスト」という言葉が注目されるようになったのはいつごろか。
日本でクリエイティブディレクターの沼畑直樹さんと、佐々木典士さんの著書『ぼくたちにもうモノは必要ない』が刊行されたのは2015年のこと。同署は16万部を超えるベストセラーとなり、2017年には「ミニマリスト」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた。
日本でブームになる前から、「シンプルな暮らし」を提案していたのがフランス人作家のドミニック・ローホーさんだ。フランスで40万部を超えるベストセラーの『シンプルに生きる 変哲のないものに喜びをみつけ、味わう』は日本でも2010年に刊行。ミニマリストの先駆けとして知られている。
しかしドミニックさんのいうシンプルな暮らしは、モノを減らすこと自体ではなく、どうすれば快適に暮らせるかを目的としているのだ。
ドミニックさんの最新刊『人生を上質で満たす、小さな楽しみ』から抜粋し紹介する第11回は、ミニマリストに学ぶ「上質なもの」の条件。
持ち物に誰よりこだわるのがミニマリスト
ミニマリストがものに対する「愛」を語ることは、一見矛盾しているように思われるかもしれませんが、実は持ち物が少ないからこそ、私たちミニマリストはものの選択にもっともこだわり、そこから得られる喜びに全神経を集中させるのです。
僧侶や放浪者、修道士のような人たちでさえ、誰も最低限の持ち物なしでは生きていけません。理想は、所有するすべてのものが、有用で、使いやすく、そして……楽しみをもたらしてくれるものであることです。
用途にもっとも適した「優れもの」を所有することは、他に多くのものを所有しないですむことを意味します。これはミニマリストにとってすでに「楽しみ」そのものです。さらに、その「優れもの」は日常の数えきれないほどの小さなストレスの源を断ち切ってくれます。
時間とエネルギーが節約され、行為そのものが楽しくなってきます。
それはそのものの持つ触感の心地よさでしょうか? それともその使い勝手(エルゴノミー、人間工学)のことを言うのでしょうか?
20世紀前半に提唱された日本の民芸運動の中心的人物のひとり、陶芸家のバーナード・リーチは、「優れたもの」はあえて説明する必要などないと言い放っています。なぜならば、ものは見るだけではなく使うことが肝心で、使ってみて初めて、私たちが気に入るかどうか、喜びをもたらしてくれるかがわかるからです。
工夫を重ねたデザインのものを手にする喜びは格別。それ自体に与えられた役割のすべてが、純粋な喜びとなるのです。
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