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戦時中に「ラジオ」はどんな危機に直面したか…中欧や日本で起きていたこと

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今、平和をどう語るか

映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』、その前後では

今から58年前、1968年8月21日の未明、ソ連軍を主力とするワルシャワ条約機構軍の戦車が、チェコスロヴァキアのプラハに侵攻した。彼らがまず向かった場所のひとつに、ヴィノフラツカー通りのチェコスロヴァキア・ラジオ放送局がある。市民たちは丸腰でその建物を取り囲み、ラジオ局の職員たちも必死に抵抗し、市民に侵攻の状況を伝えるラジオ局を守ろうとした。

イジー・マードル監督の『プラハの春 不屈のラジオ報道』(原題 Vlny、2024年。Vlnyは「電波」の意)は、その局の国際部で働く若いエンジニアの目を通して、「プラハの春」改革運動からその挫折までを描いている。チェコの興行記録を塗り替え、アカデミー賞のチェコ代表にもなった作品だ。日本でも、2025年12月より、各地の映画館で上映された。カルロヴィ・ヴァリ映画祭での初上映は、数分間のスタンディングオベーションで迎えられたという。あるチェコの批評家は、国際ニュース部で働いていた人々の、圧政のもとでの必死な姿を描いたことが評価されたのだと述べている。

(『プラハの春 不屈のラジオ報道』の日本語版トレイラーチェコ国内で歴史的大ヒット&国内アカデミー賞を総なめ!映画『プラハの春 不屈のラジオ報道』予告編)

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わたしも同作品をブダペストの映画館で鑑賞したが、まさにその時代の描き方こそが問題だと思った。エンターテイメントとしては非常に面白く、役者の演技も素晴らしいのだが、歴史学に従事する者としては違和感を覚える場面がいくつかあったというのが正直なところだ。

たとえば、チェコの近現代史を専門とするミュリエル・ブレーヴが指摘するように、冒頭に挟まれる「(共産主義時代に)政治犯として収容された」人数とともに共産主義時代に処刑された政治家の写真が映し出され、それに続いて「(その政治犯のうち)処刑された」人数とともに「見せしめ裁判」の様子が映し出されるのだが、この数字がそもそもかなり誇張されたものであることは、初見では気づきにくい点だろう。また、これらの政治犯への共産主義政権の暴力は、1950年代初頭の、いわゆる「スターリン主義」の時代のものである。映画の舞台である1967年から68年は、チェコスロヴァキアでも文化的な自由化が進んだ時期にあたり、異なる時代の描写から映画を始めるのはミスリーディングである(1)。

とはいえ、この映画は、あの時代の重要な空気感を伝えるのに成功している。それは、ラジオが「抵抗」と結びついた、きわめて日常的な風景のなかにあったオブジェクトだったという点だ。

そもそも、チェコスロヴァキア・ラジオは、かなりユニークな放送局で、その大きな国際放送局部門があることで有名である。ラジオ・プラハと呼ばれるその国際部門は、「カウンター・ブロードキャスト」の結果として生まれたものだ。ラジオ・プラハが英語やドイツ語を含む、複数の外国語で放送を始めたのは1936年8月31日のことで、ナチスのプロパガンダの「対抗(カウンター)」放送となるためだった。

ラジオ局は1968年以前にも、放送をめぐって文字通りの「戦場」に姿を変えた。1945年5月、第二次世界大戦終局に近づいた際のプラハ蜂起でも、ナチス親衛隊が放送局の建物を武装占拠し、職員たちは館内の表示をすべて外して守備隊を混乱させ、放送を続けようとした。ドイツ軍機による爆撃で放送は一時中断しつつも、別の送信所を利用して、放送を再開するなど、市民は粘り強く抵抗した。

1948年の共産党によるクーデター以降は、放送局は冷戦下のプロパガンダの道具へと変容していく。その際、国際放送部門に配属されたのは、外国とのつながりをもっていた放送局員や、対ナチスのレジスタンス運動に参加していたひとたち、そしてユダヤ系チェコ人などだったという。その中には、1950年代初頭のスターリン主義の時代に処刑されてしまったひとさえいた。つまり、プロパガンダ発信の矢面に立ったのは、こうして複雑な立場に置かれていたひとたちだったというわけだ。検閲もきわめて物理的なプロセスだった。たとえば、編集者は原稿を持って所定の窓口へ行き、ベルを鳴らし、それを検閲官が読み、無害と判断すればその場で判を押したのだという。映画にも似たような確認のシーンが登場する(2)。

2026年現在、ラジオ・プラハの後継にあたるラジオ・プラハ・インターナショナルは、開局90年を迎えたばかりだが、その存続の危機に立たされている。アンドレイ・バビシュ政権のもとで、放送を支える外務省が、その予算を四分の一近く削減し、2027年をもって国際放送を打ち切る方針を示したのだ。現在、これがメディアの自由の制限ではないかという点が争われている。

このようにラジオが危機に立たされているのは、チェコだけの話ではない。

すでに、冷戦時代から長い歴史をもち、プラハに本拠地を置くもうひとつのラジオ放送局が、一部のプログラムの業務停止と予算削減に追い込まれていたのだ。

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