「いたいた!」「ローリングしてますね」「かわいい……」
北海道東部に位置する、浜中町の霧多布(きりたっぷ)岬。人々が視線を向けるのは、海原をたゆたう野生のラッコである。絶滅危惧種に指定され、日本の水族館でも珍しくなった生き物だが、なぜここで見ることができるのだろうか?
◇
ADVERTISEMENT
はじまりは約10年前。3頭のラッコが、岬の沖に居ついたことだった。その後、2018年には、国内で初めて、野生ラッコの赤ちゃんの誕生が確認された。
「現在、8~10頭ほどのラッコが見られます。ここで生まれ育ったラッコはもう少しいるようなのですが、約8km圏内を自由に移動するうえ、根室や厚岸(あっけし)など道東の他のエリアにも行き来するので、定住しているのはそのくらいの数かなと」(浜中町商工観光課・藤原さん、以下同)
観光とラッコが共存する“奇跡の地”
なぜ、ここなのか? 答えは、岬の背後に広がる湿原にある。約3168haもの広大な「霧多布湿原」の栄養分が川を通って海へ流れ込み、昆布の藻場を育てる。そこにウニやカニ、貝類が集まってくる。どれもラッコの好物だ。
「エサが豊富なことに加えて、海の水深は浅く、岬の内側の波は穏やか。ラッコにとって過ごしやすい環境です。大きな木が少ないため猛禽(もうきん)類の脅威が他の地域より少ないのも影響しているかもしれません。『船に乗らなくてもラッコを見られる場所』というのがポイントですね」
岬の標高は約50m。肉眼では小さな影しか見えないが、双眼鏡や望遠レンズをのぞくと、ラッコのかわいらしい表情までうかがえる。ラッコにストレスを与えない距離から人間が観察できる、なんとも奇跡的な場所である。
特集
移動編集部 「文春オンライン」があなたの街に
おすすめのキーワードタグ一覧





