- 2026.10.29
- 青山義明
『本田宗一郎杯 Hondaエコマイレッジチャレンジ2026 第45回全国大会』が、栃木県『モビリティリゾートもてぎ』で10月24日(土)~25日(日)の2日間にわたって開催されました。「1Lのガソリンでどこまで走れるか?」の競技会としてスタートし、今大会より「電費」を競う「電動二輪車クラス」が新設されました。今後どのように進化していくのか、その行方を占います。
大きく変わる「燃費」競技会
『本田宗一郎杯 Hondaエコマイレッジチャレンジ2026 第45回全国大会』が、栃木県『モビリティリゾートもてぎ』で10月24日(土)~25日(日)の2日間にわたって開催されました。
『Hondaエコマイレッジチャレンジ』は、「1Lの燃料で何km走行できるか」を競う大会です。その歴史は古く、1981年に『Hondaエコノパワー燃費競技大会』として始まりました。
競技には、ホンダ製4ストロークエンジン(スーパーカブ50ccの生産終了に伴い、2026年大会からは全クラスで排気量の上限が150ccに変更されました)をベースにした車両を使用します。決められた周回数を制限時間内に走行し、使用した燃料の量から燃費を算出します。
初回大会の最高記録は、鈴鹿大会(三重県・鈴鹿サーキット)が292km/L、桶川大会(埼玉県・桶川特設会場)が621km/Lでした。
その後、1985年には1000km/Lを突破し、2011年には3644.869km/Lという驚異的な記録が生まれ、10年以上が経過した現在も、この記録は破られていません。
参加者の所属によってクラスが分けられており、中学生、高校生、大学・短大・高専・専門学校生、一般の4クラスが設けられています。
また、いわゆる1人乗りのオリジナルエコラン競技車以外に、2人乗りクラスや二輪車クラスも用意されています。
「モビリティリゾートもてぎ」開催の全国大会のほか、各地で地区大会も行われています。2026年は5月に「第17回もてぎ大会」、6月に「第39回鈴鹿大会」、8月に「第41回九州大会」(HSR九州)が開催されました。
全国大会と地区大会はそれぞれ独立した大会として開催されるため、地区大会に参加せず、全国大会から出場することも可能です。

全国大会には近年も毎年200台を超える車両が集まり、今回は227台がエントリーしました。ちなみに「本田宗一郎杯」と創業者の名前を冠した、唯一のホンダ主催イベントとなっています。
燃料の消費量をいかに抑えるかを競うこの大会は、カーボンニュートラル(CN)の実現も目指しています。2023年にはCN燃料を試験導入し、2024年大会からはCN燃料クラスを新設しました。
この2年間は、通常のハイオクガソリンとCN燃料でクラスを分けて競技を行ってきました。そしてその移行期間を終え、今大会からは使用燃料がCN燃料に一本化されました。
CN燃料は、光合成によって二酸化炭素を吸収して育った植物などを原料として製造される燃料です。今大会で使用されたのは、ハルターマン・カーレス・ジャパンが取り扱う再生可能燃料「ETS RenewaBlaze」です。

1997年からもてぎで開催されている全国大会の舞台となるのは、モビリティリゾートもてぎのオーバルコースです。このコースを7周(2人乗りクラスと二輪車クラスは3周)し、燃費を競います。
競技の流れとしては、走行前に180ccのガラス製公式燃料タンクを使って燃料の供給を受け、燃料タンクの重量を計測します。
その後、平均時速25km以上を維持しながら、設定された制限時間内に規定周回数を走行します。7周の場合、走行距離は1万6389.68mとなります。
ゴール後、再び燃料タンクの重量を計測し、発表された燃料密度(今回は0.771)を用いて燃料消費量を算出します。そしてその数値を基に、最終的な燃費が決定されます。
今大会の最高記録は、一般クラスの「水曜クラブ」が記録した2552.817km/Lでした。
ホンダの電動スクーター「EM1 e:」による競技が新設
内燃機関(ICE)を搭載した車両に加え、今回の全国大会より「電動二輪車クラス」が新設されました。
使用するのは、ホンダが販売する電動スクーター「EM1 e:」です。競技用に改造した車両で、もてぎのオーバルコースを3周(6856.72m)して「電費」を競うこのクラスには、27チームが参戦しました。

この週末は雨に見舞われ、土曜日の練習走行ではキャンセルするチームもありました。日曜日は曇りとなり、朝まで残っていた雨で濡れていた路面も、ところどころ乾き始めた状況です。
しかし、電動二輪車クラスの走行時間帯になると再び雨が降り始めます。そんな厳しいコンディションでも、決勝には全車が出走し、3周を走り切りました。
使用するバッテリー「Mobile Power Pack e:(MPP)」は主催が用意します。棚に並べられたものから各チームが選び、100%充電されていることを確認したうえで、走行直前に車両へ装着します。
走行終了後にバッテリーを取り出し、ソケットでパソコンにつなぎ、使用した電気量を計測します。なお、車検など走行以外の確認作業には、別のMPPを使用します。
各チームは、カウルの取り外しや空力板の装着、ライダーの乗車姿勢の変更など、「CN二輪車クラス」で培われたノウハウを活かして電費向上に取り組んでいました。
一方で、駆動ユニットは「ブラックボックス化」されており、内部に手を加えられないことや、ナンバーのない競技車両のため、事前に走行テストを行う場が限られることなど、課題もあります。
電動二輪車ならではのセッティングや走行ノウハウの蓄積は、まだこれからと言えそうです。
そして記念すべき初代チャンピオンに輝いたのは、「長野県松本工業高等学校 原動機部」でした。記録は77.302km/kWhです。
ライダーを務めたのは、体重わずか35kg(!!)という1年生の中村さん。この日のために3kgほど減量し、身体を仕上げてきたそうです。
チーム内で軽量なメンバーがライダーに選抜されることが多く、電費を競ううえでライダーの体重もまた大きな要素のひとつです。軽さが武器になることを、改めて感じさせる結果となりました。
2年後には新たな競技カテゴリー「電動クラス」が始動
さらに今大会では、昨年に引き続きホンダ社内チームが製作した「電動クラス」競技用試作車のエキシビション走行も披露されました。
社内チームによるデモランは2大会連続となりますが、今回の車両は前作から大きく姿を変えています。
初代(2025年大会)の試作車は、今回も最高記録で走行を終えた常勝チーム「水曜クラブ」の成形型を流用し、フロントに20インチの大径ホイールを採用。後輪には「EM1 e:」のインホイールモーターをそのまま使用したフロント2輪/リア1輪の3輪モデルです。

2代目となる今回の試作車は、前後14インチタイヤを採用しています。動力源には電動パワーユニット「eGX(GXE4.0D)」を採用し、モーターの出力を、チェーンを介して後輪に伝える構造となりました。
車両サイズも見直され、空気抵抗を示すCdA値の低減を図るなど、ボディシルエットも大きく変化しています。
一方で、着脱式バッテリーであるMPPを使用する点は継承しており、各チームが独自に工夫できる領域を広げ、さまざまなアイデアを競技に反映できる車両を目指しているようです。
また、テレメトリーシステムも搭載され、練習走行と決勝走行中のデータが場内の巨大ビジョンで見ることができ、さらにYouTubeでも配信されました。走行中のデータを確認できることで、車両の性能や走行状況をより詳しく知ることができる試みとなっています。
この電動クラス競技車については、現時点でレギュレーションが発表されていないため、詳細は不明です。今後の発表時期にもよりますが、実際の競技として開催されるのは2年後とされています。
どのような車両規定となるのか? そして、各チームはどこまで電費性能を高めてくるのか? 新たな競技カテゴリーの誕生に、期待が膨らみます。
なお、オーバルコースでの開催は今大会が最後となり、次回からは西コースを使用して開催される予定です。
コースが変われば、求められる車両性能や走行技術にも変化が生まれるはずです。これまでとは異なる結果も期待されるなか、「電動二輪車クラス」の電費記録が今後どこまで伸びていくのか。その進化にも注目していきたいと思います。

Writer: 青山義明
美術大学で日本画を学んだ後に、編集プロダクションを渡り歩き、フリーランスライター&フォトグラファーとして独立。「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」や「アジアクロスカントリーラリー」といったモータースポーツ取材をメインに2輪4輪問わず国内外のサーキットやラリーシーンを取材中。日本モータースポーツ記者会会員。

































