AIエージェントの利用拡大を見据え、その自律的なアクセスを制御するという新たな課題に対応する必要性が生まれている。では、企業はゼロトラストをどう強化していけばいいのか。Gartnerが推奨する5つの基本原則を具体的に解説する。
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組織がデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、AI(人工知能)をビジネスプロセスやアプリケーション、ワークフローに組み込むにつれて、サイバーセキュリティのリーダーは増大する課題に直面している。それは従来のセキュリティモデルが適応できる以上の速さで、アタックサーフェス(攻撃対象領域)が拡大していることだ。
新しいAIエージェントやクラウドワークロード、アプリケーション統合、自動化されたワークフローを導入するたびに、侵害につながる新たな経路が生まれ、組織のサイバーリスクエクスポージャ(サイバーリスクにさらされる度合い)が高まる。
この環境では、組織には組織全体で暗黙の信頼を排除しつつ、リスクに基づいた意思決定を可能にする一貫したセキュリティフレームワークが必要になる。この目的を達成するための戦略的パラダイムとして、ゼロトラストが注目を集めている。
生成AIや自律型AIエージェントなどの新しい技術は、セキュリティ上の新たな考慮事項を伴うが、ゼロトラストの中核となる原則は変わらない。組織は一貫した保護とガバナンスを確保するために、セキュリティへの全ての取り組み(AIシステムを統制する取り組みを含む)を共通のゼロトラスト原則に整合させる必要がある。
Gartnerは、サイバーセキュリティリーダーがセキュリティ戦略や技術投資、成熟したプログラムを進める指針として活用できる、5つの基本原則を推奨している。
1.ゼロトラストはセキュリティパラダイムであり、技術の導入ではない
Gartnerは、ゼロトラストを「アイデンティティー(ID)、コンテキスト、リスクの継続的な検証を通じて、暗黙の信頼を明示的な信頼に置き換えるセキュリティパラダイム」と定義している。アクセスに関する判断は単一の認証イベントに依存するのではなく、継続的に評価、検証されなければならない。
組織は、条件付きアクセスポリシーや多要素認証、ID、デバイス、セッションのリスクシグナルに対する継続的な監視といったメカニズムを通じて、明示的な信頼モデルを確立する必要がある。
2.敵対的なアクターの存在を前提とする
多くの場合、従来のセキュリティプログラムは攻撃者によるアクセスを防止することに重点を置いている。ゼロトラストはそれとは異なる前提――つまり「攻撃者が既に環境内に侵入している可能性がある」という前提から出発する。
この考え方により、焦点は封じ込め、レジリエンス(回復力)、迅速な検知へと移行する。組織は「システム、アカウント、さらにはAIを活用したツールでさえも、いずれは侵害される可能性がある」という想定に基づいて対策を設計すべきだ。
AI環境において、これはAIエージェント、外部ツール、取得されたコンテンツを、信頼できない可能性があるものとして扱うことを意味する。プロンプトインジェクションや不正なアクション、不正操作のリスクを軽減するため、エージェントの全てのアクション、ツール呼び出し、外部データソースは検証、認可、監視の対象とする必要がある。
同時に、組織は暗号化、継続的な監視、不要な管理者権限の削減といった基本的な対策も引き続き強化すべきだ。これらの対策は、ワークロードが従来型のものか、あるいはAIを活用したものであるかにかかわらず、依然として不可欠だ。
3.IDをアクセスの基盤として確立する
IDはゼロトラストの中核を成す。アクセスに関する判断は、検証済みのワークロード、ユーザー、デバイスのIDに基づいて行う必要がある。
だが、AIの台頭によってIDの定義は拡大している。AIエージェントがユーザーに代わってシステムにアクセスし、情報を取得し、アプリケーションとやりとりするケースが増えている。そのため、組織はAIエージェントを、固有の認証および認可要件を持つ個別のIDとして扱わなければならない。エージェントとシステム間、エージェント同士、エージェントとツール間のやりとりについては、アクセスを許可する前に認証する必要がある。
ID管理が甘い組織では、セキュリティチームによる効果的なガバナンスが及ばない新たな死角や信頼関係が生まれる恐れがある。
4.アクセスできる機能を必要なものに限定する
ゼロトラストは最小権限の原則に基づいている。ユーザーやデバイス、アプリケーション、AIエージェントを含むワークロードには、意図された機能を実行するために必要なアクセス権のみを付与するべきだ。アクセス権は明示的に付与し、定期的に見直し、リスクとビジネスニーズに基づいて調整する必要がある。
AIシステムでは、この原則は特に重要だ。AIエージェントが価値を提供するために、企業リソースへの無制限のアクセスを必要とすることはない。AIエージェントがアクセスできるリソースは、割り当てられたタスクを完了するために必要な特定のデータ、API、システムに限定すべきだ。組織は「デフォルトでは拒否し、明示的に許可する」アプローチを採用し、権限の拡大を防ぐために権限を継続的に見直す必要がある。
アクセスを制限することで、エクスポージャを減らし、アカウントやシステム、AIエージェントが侵害された場合の影響を抑え込める。
5.リスクベースの適応型アクセスを適用する
最後の原則は「動的なデジタル環境においては、信頼は静的なものではあり得ない」という認識に基づいている。アクセスに関する判断は、ユーザーとワークロードの挙動、デバイスの健全性、場所、脆弱(ぜいじゃく)性の状態、脅威インテリジェンスといったコンテキストのシグナルを考慮に入れ、リスクに基づいて継続的に適応させる必要がある。
組織は、固定されたポリシーに依存するのではなく、信頼レベルにリアルタイムの状況を反映させるべきだ。このことは、AIエージェントがより自律的になり、企業のシステムやデータにアクセスするようになるにつれて、特に重要になっている。セキュリティチームはAIエージェントの活動を継続的に監視し、行動パターン、データの機密性、新たな脅威に基づいて、権限、ツールアクセス、自律性のレベルを調整する必要がある。
今日リスクが低いと見なされているAIエージェントであっても、挙動が変化した場合や、新たなリスク指標が現れた場合は、翌日には追加の統制が必要になるかもしれない。目標は、単にアクセスを安全に許可することではなく、状況が変化してもアクセスが適切であり続けているかを継続的に検証することにある。
出典:Five Core Zero-Trust Principles for Securing AI and Digital Transformation(Gartner)
※この記事は、2026年9月に執筆されたものです。
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